『日本の独立』を読む

植草一秀氏の著『日本の独立』を読む.2010年12月6日第1刷発行,となっているのでそれより早く本屋に出たのだ.副題が「主権者国民と『米・官・業・政・電』利権複合体の死闘」で,これが本書の内容を一言で表している.事実に基づく説得力のある内容で,午後2時頃買って授業のはじまる前までにおよそ目をとおし,夜から今朝,再読した.事実の積み重ねなのでそれを要約することはできないが,よくここまで明らかにしたものだと感心する.
日本の国民が現在対峙しているものの姿をこのように明確にするのは,本当に勇気のいることであると思う.実際,この日本で『米・官・業・政・電』利権複合体を追求したジャーナリストが幾人も非業の死を遂げている.あるいはまた脅しに屈して節を曲げた者も少なくない.そのなかでこれを書ききった植草氏に心から敬意を表する.
その上で2点,これはこれからの問題であるのだが,加えたい.
1)「『米・官・業・政・電』利権複合体」こそが現代資本主義そのものなのだ,ということである.日本だけの個別性ではなく,形はそれぞれ違っていても,これが資本主義である.先日書いたバウディがいうように,「敵は資本主義と代議制民主主義とのカップルを唯一可能な社会のあり方だと喧伝し、その他のあり方を端的に不可能なものだと位置づけることで、『理念をもつことなく生きること』を我々に強いようとする」.本書をよく読めば,この情報操作のありようがつかめるし,それに惑わされることなく真実をつかむ力がつく.そしてこれからの国あり方,われわれの生き方へのヒントを得ることができる.
2)本書は,超大国アメリカの存在を前提に,それと日本支配層の関係を暴露するという内容である.が,このような構造があきらかになる背景に,実はそのアメリカがすでに衰退過程に入っているという事実がある.本書のような内容の本が出版されること自体,アメリカの力の衰えである.いまそのアメリカはファシズムに向かっている。戦前の日本軍国主義と同じ道をたどるかも知れない。このアメリカといかにつきあい、そしてアメリカ後の世界をどのようにつくってゆくのか、そのなかで日本はどのように進むのか、現代政治はすべて、これをめぐっての対立なのだ.
私はこの本を,これから自分の進路を考えようとする高校生や大学生にこそ,読んでもらいたいと思う.明治六年の政変までさかのぼって書かれている.日本近代史を学ぶ人も読んでほしい.そしてたとえ本書のような良心的な本であってもやはり鵜呑みにはせず,自分で考えるのだ.まさに生きる理念をつかむために.