時代の課題

nankai2009-04-07

 春期講習の間,いつも鞄に入れて電車の中で読み通した本がある.『壊れゆく世界と時代の課題』(市野川容孝,小森陽一編,岩波書店,2009.3.26)である.いくつかのテーマについて基調報告と対話で構成されている.昨秋の金融恐慌勃発の前に討論は終えられていたようだが,起こったことを正確に予見している.第1章 アジア/日本を貫く<近代>批判のために.第2章 世俗と超越と.第3章 暴力と自由のあいだ.第4章 言語と法,人間の領域.第5章 「公共的なもの」と社会的連帯.という内容である.ほとんどが東大大学院総合文化研究科の先生だ.
 付箋をつけたり線を引いたところを抜き書きしているところである.討論は掘りさげ不足であるが,いくつか考えていなかった視点や問題の所在に気づかされるものであった.このように現在世界が当面している問題をまとめて提示しようということは必要なことであり,読んで面白かった.自分の関心ある領域についてもう少し深めて考えたい.そしてできることなら高校生に何かを伝えたい.
 写真は家の隅に咲いた射干(しゃが)の花.昔,小学校の裏は茶畑と竹藪が広がっていた.放課後はよくそこへ行った.竹藪の端の日だまりにこの花が咲いていた.今でもそれを覚えている.以来この花が好きだ.辞書には次のようにある:アヤメ科の多年草。各地の山野の林中の斜面などに群生。高さ三〇〜六〇センチメートル。葉は剣状で平行脈があり、長さ二〇〜四〇センチメートル。春、茎頂に緑色の苞をもつ枝を数個分け、各枝頭に径約五センチメートルの花を一〜二個ずつ開く。花はアヤメに似るが、白紫色で黄色い斑点があり縁は糸状に細裂。和名は、ヒオウギの漢名「射干」による。(国語大辞典(新装版)小学館 1988).
 と,ここまで書いて新聞を見ると,「補正予算10兆円」.すでに日本は,対国内総生産(GDP)に対する国債残高の比率が第二次大戦中の水準に並び、G7諸国の中でも最悪の借金国だ.そこにこの補正予算である.一体どこからこの金を持ってくるのか.国債であり将来の世代からの借金である.10兆円の補正予算に対して,アメリカの主な新聞は「カミカゼ支出」と揶揄している.国家破綻へと向かう自殺行為と書かれているのだ.借金でものを買い好景気を演出してあげくに破綻したアメリカに言われることはないとも思うが,日本の新聞は景気対策で効果があるようなことばかり書いて,問題をいっこうに指摘しない.10兆円のほとんどは大企業の懐に入りその収支を少し変えるだけのことである.日本政府は,先日のロケットの問題といい,この10兆円といい,内閣の支持率を上げる人気取り政策に終始している.あげくに世界で孤立し国家は借金漬けで財政事情は突出して悪い.この先,本当に大きな教訓を得ることになる.