ABC予想査読通過の報に接して

 望月新一教授ABC予想を証明する論文が査読を通ったとの報道があった.これは数学の世界で21世紀のもっとも大きな証明ということになる.論文そのものは2012年に公開されたが,方法そのものがまったく新しく,専門家が査読して評価するのにもこれだけの時間がかかったのだ.
 この間の経過などは「異世界からきた」論文を巡ってなどに詳しい.ここの写真説明に「23歳でプリンストン大学Ph.Dを取得、32歳で京都大学数理解析研究所教授に就任している望月新一。日本国外での講演をかたくなに拒んでおり、英国でのカンファレンス参加時も、テレビ会議経由で質問に答えた。」と書かれている.彼は日本の教育体制からの人ではないが,京都に来てからはここを離れていないようだ.京都という街に生まれた論文であるのかも知れない.いろいろ思う報道であった.
 こちらは,ようやく私の一文『神道新論』を出版するところが見つかり,そうなるとよけいにあちこち手を入れたくなって,やっている.明治維新から150年の来年の前半には出版したい.日本近代を見直すということが基本である.
 それと,来年2月にある教育数学第3回シンポジュウムでこちらも喋るので,その予稿も仕上げて来週には送りたい.思えばこのシンポジュウムが行われるのも京大数理研の講堂である.2011年の人と会う(続)や,2014年の言葉と数学は人間の条件にこれまでの経過を書いている.授業や問題づくりの仕事,地元自治会の仕事,昨日は市役所まわりになって,昼の前後3時間をこれに使ったが,これが逆に息抜きになるようなところもある.
 息抜きのついでに.先週の日曜日は父の二十七回忌ということで宇治に戻った.宇治の昔からの川魚屋で,ウナギの肝焼きと鮒の洗いを卵にまぶしたのを買った.そして昼に食べきれなかった鮒寿司.これをもって帰って,並べて皿に盛ってみた.スーパーなどで売っているウナギの肝焼きは味がよくない.これは本当の炭焼きで,本来のうまさがある.鯉の洗いはよくあるが、新鮮な鮒の洗いはなかなかない.それぞれ400円くらいで売っている.鮒寿司は前にも書いたが,これはなんとも言えない味がある.琵琶湖と宇治川の恵みである.これを食べながら,しかし考えることは,若狭湾原発事故が起これば,これがなくなるということだ.