沖縄知事選勝利

 沖縄県知事選挙で玉城デニーさんが大差で勝った.30日夜に当選確実が出てようやく何か一つ前に進んだ気持ちになった.

 この間,沖縄現地に滞在して報道を続けてくれた田中龍作ジャーナルの田中さんに心から感謝し,敬意を表したい.大手の報道機関はまったく現地の様子を伝えないし,当選を伝えて以降は無視を決め込んでいる.そのなかで一人の報道人としての田中さんの行動は,まったく頭の下がる思いである.ありがとう.

 辺野古基地建設に反対するか否か,これが選挙の争点であった.佐喜眞陣営はこの争点を隠した.隠したこと自体が,争点であったことを意味している.

 辺野古の基地はもう20年前に計画が出されたものであるが,それはアメリカの要請によって計画されたものではない.米軍が,沖縄を出てグアムなどアメリカ領内の基地に移る動きがあるときに,日本の側が,アメリカ軍を沖縄に引きとどめるために計画したものである.普天間基地の負担軽減は口実に過ぎない.

 日本の支配層,その中枢をなす外務官僚などの官僚組織は、在日アメリカ軍を後ろ盾としている.在日アメリカ軍とそれを通じたアメリカ軍産への隷属,これが日本支配層の支配権力の土台である.これが,戦後の日本の政治体制なのだ.

 そしてこの戦後体制は,その成立のときから沖縄をアメリカに差し出し,基地そのもを含め見せたくない不都合なことごとを沖縄に押しつけ,外から見えないようにして来た.その行きついた果てが今日のアベ政治である.

 辺野古基地建設が争点ということは、対米従属することで支配を維持しようとする戦後の日本政治のあり方に反対するか否かということであり,このような支配層と沖縄の人々との矛盾が,現在の主要な矛盾であった.

 故翁長前知事が,そして玉城候補が「イデオロギーよりもアイデンティティを」ということを基調として沖縄の未来を切り開こうと訴えてきたのは,まさにこの主要な矛盾を軸にまとまって闘おうということである.

 日米安保条約そのものをどうするのかということは,今回の選挙では主要な矛盾ではなかった.今回の勝利は,この問題で分裂することなく闘ったがゆえにもたらされたる.

 この玉城さんの勝利が日本の支配層とアベ政治に与えた打撃は大きい.大きいからこそ,御用マスコミは無視を続けている.

 今回の勝利は,ほんとうに大きな力をアベ政治と闘うものに与えた.やれば出来るということだ.そしてまた,アベ政治と闘うものにとって,大きな教訓を得た.それは,最も主要な問題を軸にして,副次的な矛盾をひとまず横に置いて,分断をのりこえ団結して闘えということだ.

 沖縄県と,日本政府,つまりアベ政治との,沖縄の現実をもとにした闘いはこれからである.沖縄の闘いに学び,われわれもまたそれぞれの場でできることをなしながら,前に進もう、そう思った次第である.