時節は春、世は悲惨

 昨夜は定例の梅田解放区の日.5時半には20人ほどが集まり,それぞれに歌い喋る.こちらはいつものように横断幕を持つのを手伝ってきた.
 大阪では,知事選挙と市長選挙で,維新対自民党の構図が確定している.21日が告示日だった大阪府知事選には地域政党大阪維新の会の吉村洋文・大阪市長(維新政調会長)と,自民党が擁立・推薦し公明党大阪府本が推薦する元副知事の小西禎一(ただかず)の2人が立候補している.そして,今日24日告示の大阪市長選では,松井一郎大阪府知事大阪維新の会代表)が維新から出て,一方,自民党公明党府本部が推薦する元大阪市議の柳本顕(あきら)が立候補する.
  維新政治とは結局のところいわゆる新自由主義のカネカネ政治であり,最後は大阪万博とカジノの誘致に行きついた.それはアベ政治に併行して進み,その先陣を努めてきたのだが,もう用済みということで,都構想に反対の立場から知事と市長のどちらも自民党系の候補が出馬,それを共産党までが支援するということになっている.維新を作った橋下徹も,やってみてしまったと思うところがあったのか,維新から離れた.
 この日の参加者は,大阪の地方政治では維新の掲げる都構想に反対であり,全国政治ではアベやめろで統一していた. 参加している一人が,4年前の同じ構図の選挙のときの横断幕を探し出して,破れを直して写真のように掲げていた.前は維新が勝った.今度はどうなるか.
 それにしても,アベ政治,である.辺野古沖のジュゴンの死への怒り,原発電力会社への補助制度を画策する経産省とアベ政府,年休も取れない今の日本社会の仕事の実態,そして働いても働いても住み難く生き難い日本,それぞれが自分の経験をふまえて語る.
 アベ政治はこの悲惨な現実を,「代替わり」の諸行事とそれに続くオリンピック騒ぎで塗り隠してゆく.賃金は下がり,原発は再稼働されてゆく.東洋の島国日本は,国際資本に国家と国民を捧げ,さらに核汚染にさらされ,人々は困窮してゆく.何ごともないかのように目の前を通り過ぎる土曜の夕方の若者は,それぞれに何を思っているのだろう.

 一昨日の金曜日の夜は,杉村さん,脇浜さんとで尼崎の山田編集長の家にうかがい,食事をともにした.脇浜さんは西宮の定時制でボクシング部の顧問をやりながらながく教員をしてきた.英語の先生で,今はたくさんの翻訳をし,人民新聞等にのせている.こんな本も出しておられる.「ボクシングに賭ける―アカンタレと夜学教師の日々 (今ここに生きる子ども)」.彼が顧問をしているときにボクシング部に来て,その後プロになり,女子ボクシングのチャンピオンである多田悦子さんのこれまでを振り返るテレビ放送「多田悦子~ボクシングにかけた人生~」が先日あった.山田さんがその録画をとってくれていて,見せてくれた.彼女のことは2009年に京都新聞にも載った.「愛のハートパンチャー」である.いろいろと教えられた.

 杉村さんは五月になったら拙著『神道新論』をたたき台に対談し,まとめてゆこうと提案してくれた.根のある地についた変革思想,これが拙著の基本的な問題意識である.この点をもっと訴える場ができればと思う.「分水嶺にある近代日本」が載る雑誌『日本主義』の第四十五号が出ればみなに送ろうと考えている.

 時節はもう春である.家のハクモクレンはもうほとんど散った.かわって花海棠の芽がふくらんでいる.来週の日曜日は地元自治会の花見である.この一,二日気温は低めだが,そのときは桜も咲いているだろう.しかし,誰かが書いていたが,アベ政治のこの数年,暗黒の時代からさらに漆黒の世になった.悲惨の世である.季節は移ろうが,しかし時代は放っておいては移ろわない.立ちあがらなければならない.