ウクライナ危機

 2月の末から3月,春のおとづれを感じるこの季節に,戦争が始まった.ロシアがウクライナに侵攻して10日が経過した.これからどのように展開してゆくのか,その見通しさえいまはわからない.この地における長い歴史も十分にはつかめていない.
 なので,いまはまだ判断は控えたいが,この戦争が資本主義におおきな影響を与えることはまちがいない.拡大しなければ存続しえない資本主義が,縮小を迫られるのだ.
 その上でいえば,いずれにせよ歴史を作るのは人民の闘いである.ウクライナにおいても,そして世界の各地でロシアの侵攻に対する人民の闘いが起こっている.田中龍作さんが現地から報告してくれている.どうかくれぐれも気をつけて,現地の人々の今を伝えてほしい.

 今回のウクライナ侵攻で思い出したのは,1964年8月のトンキン湾事件といわれるものだ.これによってアメリカは北ベトナムへの爆撃を開始し,ベトナム戦争が始まった.そして「ベトナムに平和を」の呼びかけの下,ベトナム戦争に反対する運動が西欧や日本に,そして世界に広がっていった.
 このベトナム戦争によって,第2次大戦後の覇権国家であったアメリカの,その国家としての衰退が始まったのである.

 今回のロシアのウクライナ侵攻もまた,ロシアの衰退の始まりとなるのではないか.かつて,フルシチョフスターリン批判と社会主義ソビエトの否定によって,経済は資本主義,政治は一党の独裁というロシアがはじまったのだが,そのロシアがこのウクライナ侵攻で大きく衰退してゆくのではないか.それはアメリカの衰退よりもっと早いのではないか.そのよう思われる.
 だが,ロシアの衰退は,その過程で世界戦争の危機を現実のものにする.表題をウクライナ「危機」としたのは,まさにこれは戦争の危機なのだ.

 しかし,戦争によって問題を解決することはできない,それは近代日本150年の歴史もまた教えている.

 今回のロシアによるウクライナ侵攻はわれわれにも大きな問いを投げかけた.
 この侵攻の歴史的な意味を掘り下げるために.ロシアとウクライナの長い歴史をあらためておさえねばならない.これらは今後ここで深めたい.
 写真は近くの池の端に咲き残っていたサザンカの花.3月6日撮す.