人と会う(続)

 昨日は,S台のM師,H師と食事をした.この数年,半年毎に会食している.M師はいつもいろいろ本を紹介してくれる.昨日もアメリカで出版されている確率と組合せ論の問題集と解答集を見せてくれた.網羅的に問題が整理されている.受験問題集としては問題数が多すぎて高校生が読む本としては大部だ.このように徹底して問題を集め整理するような本はなかなか日本にはない.数学オリンピック用の問題集もいろいろ出ているようで,アメリカの数学の底辺の広がりを感じさせる.
 もう一つ最近知ったと言って見せてくれたのが『初等的に解いた高等数学の問題 I〜IV』(東京出版)だ.1950年代の旧ソ連で出版されたものの翻訳だ.今は絶版であるがその古本を同僚が手に入れ,それを借りたと言うことだった.この本,私は高校2年の時にI,II,IVを手に入れていたものだ.見せてもらったものより前の版,1961年発行のものが手元にある.しかし高校のときはなかなか読みきれなかった.高校教員時代から少しずつ読んで,当時手に入らなかったIII巻もその後東京図書さんで写しをもらい,あらかた読んだ.
 『数学対話』の「カタラン数」や「チェビシフの多項式」などの中に再構成されている.M師がこれをもってきたのは驚きだった.東京図書のこの数学新書シリーズにはこの他に「微分微分方程式」,「力学の数学への応用」,「方程式の整数解」「スツルムの解法」「高次方程式」などあり,これらも手元にある.昔の8ビットPCの時代に,これを参考に「ペル方程式の解の構成」のBASICプログラムを自然数列の四則演算からBASICで組んで,一晩動かしておいて解を作ったのも懐かしい.旧ソ連時代の1950年代,ある意味では戦後のソ連が科学分野でいちばん進んでいた時代のもので,たいへん野心的な本だ.『数学対話』をつくっていった動機の一つが,これらの本から受けた刺激だ.
 M師は読んでみるとのことだったので,これからまたその内容でいろいろ交流したい.いずれM師もウエブページを作ってゆくとのことだった.こういう草の根数学の輪が広がることを願っている.ということで,いろいろ有意義な会食であった.