『フクシマの嘘 其の弐』を観る

時節は早春.春めくとき.はるのおとづれを聴き,それにひたるときも大切である.写真は夙川の鴨のつがい.この風情もいい.だが,東電核惨事から3年.核惨事がいかに過酷で悲惨なことであるか.それは日ごとに明らかになる.核惨事のもとにある早春.この現実が否応なく日本列島弧を覆う.しかしそれが日本の報道機関によってつたえられることはまずない.
このとき,ドイツのZDFテレビ制作,ヨハネス・ハノ監督の『フクシマの嘘 其の弐(隠ぺい・詭弁・脅迫)』がYouTubeで公開された.2014年3月1日.これを観る.ここに YouTube の日本語字幕版がある.事実そのものを取材し,政府や原子力村のいっていることの嘘を暴き,やっていることの非人間性を明らかにする.阿武隈川が汚染物質を集め,それを仙台湾に放出し続けている事実は衝撃だ.しかし日本政府は基準値を引き上げることでこの問題を覆い隠す.その実態は実際にこれを観てほしい.ここにもあるように,事故から5年後のチェルノブイリでは10mSで強制避難.福島核惨事発生から3年後の日本では20mSなら帰還可能!これが日本政府の現実である。
一方,「Atmospheric Chemistry and Physics(大気の化学と物理)」という学術誌に載った論文「Modelling the global atmospheric transport and deposition of radionuclides from the Fukushima Dai-ichi nuclear accident」等をもとにしたEUの報告書を,ブログ「カレイドスコープ」の「欧州:日本の国土の約15%が「徹底的な放射能監視地域」に」のなかで,詳しく紹介されている.そのなかにある汚染状況の地図は明確だ.ここでオリンピックが開催できるということはありえない.この図は日本列島弧の核汚染分布(同論文内).このような核汚染の事実が伝わるなら,どんな選手も参加を拒否するだろう.
追加:下記コメントに書いた広瀬さんの呼びかけを再掲する.
若いスポーツマンへの広瀬さんの呼びかけ: 『COUNTERPUNCH』に,「a letter to all young athletes who dream of coming to tokyo in 2020」(東京五輪を夢見る若いアスリートへの手紙)として「Some Facts You Should Know About Fukushima by TAKASHI HIROSE」(福島について知っておくべき事実,広瀬隆)が掲載された.東京五輪の賛成反対はいろいろあってよい.しかし,事実として出来るのか,これが問題である.結論として言えば,開催は不可能である.そのことを広瀬さんは事実をもって語りかける.この手紙がもっともっと広がることを願っている.
それぞれ,ぜひ確認してほしい.これらの報道や報告から,福島の核惨事は,小出裕章さんの言われるように,まさに「人類が初めて遭遇する過酷事故」であり,何度も何度も言ってきたが,私の次の言葉はやはりその通りだと確認した.これを書いているとすぐ人民新聞1508号が送られてきた.ウエブサイトにもでている.「福島事故4年目の現実:激増する放射能による健康被害,横行する情報秘匿と世論操作」が来た.鈴木さんもまた同じことを告発しておられる.ぜひ一読を.
地震列島弧に原発を作り,情報を操作して真実を隠し,核汚染を世界にまき散らしながら誰一人責任を取らず,福島を見捨てる原子力村とその官僚.この原子力村を存続させることは,人間と地球に対する冒涜である.日本列島弧に住むのものの責任においてこれを解体し,人類の叡智を集めこの核惨事に対さねばならない.
そうでないだろうか.しかしではいったいどうして原子力村を解体するのか.一人一人の人間としてのやむにやまれぬ行動,その積み重ね以外にないことは確かである.それしかない.しかしでは誰がそれを組織化し,まとめるのか.都知事選ですらあの状況だ.われわれは難しい歴史の課題に直面している.その思いのつのる早春である.