ドイツ滞在・上

 ドイツはフランクフルトの北30Kmにあるバート・ナウハイムの町に3月19日から滞在している.バート何々という町はこのあたりにいくつかあるが,温泉という意味だそうである.古代から温泉が湧き出ていて,ローマ時代に人はすでに湯に入っていた.次男一家がここにある研究所に留学ということで,昨年秋からこの町に住んでいる.それでこちらの時間が作れたのでやってきた次第である.
 この町は空襲を受けなかった.それで古い建物が残っている.町の中心には温泉の噴水があり,それを取り囲んで湯治のための施設がある.そのまわりは,今の時期は冬枯れであるが,深い木立の公園である.3月半ばであるが朝夕気温は低く,風は冷たい.外に出るには日本の冬の上着がいる.
 ドイツの大都会はおしなべてあの戦争で一度は灰燼に帰している.フランクフルトの街までは電車や車で30分である.この町に降り立つと,大阪と雰囲気が似ている.難波あたりの感じである.フランクフルトは1945年,まったくの廃墟であった.大阪もまた,あの空襲で焼け野が原となった.大阪とフランクフルトは,どちらもそこからそこから再興した商人の街である.ドイツの町は,街の道が聖堂などを中心にまわっている.御堂筋のような道はないようだ.ここは大阪と違うところである.
 マインツには電車で出かけた.ケルンは車でつれていってもらった.ライン河沿いの,それぞれに古い遺跡のある街である.それぞれ焼け野が原に残った古い石造りの遺跡を再建してきた.あの戦争で灰燼となったところから再建してきた街である.大阪や神戸に通じる,古いものと新しいものが雑然と同居する街である.これは,フランスの街や京都と違う.戦争の爪痕の大きさを思わずにはいられない.
 ドイツは,ビールとワインが安い.パンも色々あって,それぞれにうまい.それでこちらもワインとパンと肉類とそしてサラダ類の食事を続けている.もう少しこの街での生活をおくり,ドイツを体で少しは覚えてかえりたい.歴史と風土が織りなす生活は,一時それにひたらないとわからない.3月31日朝には大阪に戻る予定である.
 写真はバートナウハイムの温泉噴水とその向こうに見える駅.さらにその向こうの煙突は温泉水から岩塩を取り出す古い工場.そして町並,公園と教会.