最悪に備え最善を尽くす

nankai2011-04-09

この2週間,春期講習と問題作成で時間がなかった.じっくり考える時間のとれないのはこの先もあまり変わりそうにない.長い時間をかけて考えてきたことごとをまとめてゆきたいと思いながら,今年も結構忙しく時間が過ぎそうだ.そしていつの間にか桜の時節である.写真は夙川堤の桜.明日この下流域は花見で賑わう.
事態はより悪い方向に進んでいる.非常のときはつねに,最悪の場合を想定し,そのときどうするかを周知徹底して,その上で最善を尽くす,ということにつきる.ところが,政府も東電も一貫して起こっている事態を明らかにはせず,よけいに不安を引き起こし続けている.考えられる最悪の事態とは,次の三つだ.
1) 福島県東部は今後長期にわたって人が住めなくなる. 2) 再臨界がはじまり,水蒸気爆発が起こり,東京も避難しなければならなくなる. 3) 東海大地震が起こり活断層が走る静岡県浜岡原発が崩壊・暴走する.
そのときどうするのか.その計画をおおやけに立て,共有する.そうならなければそれでよい.しかし最悪の場合の準備はする.浜岡原発は止める.それでも冷却電源はいる.巨大地震電源喪失への備えをする.それらの計画を立てつつ,福島現地では最善を尽くす.これしかない.浜岡原発については「福島『原発震災』は予言されていた」を見よ.
ところが政府はそれどころか逆にあくまで事態を過小に評価しようとする.総務省は4月6日,インターネットサービス事業者ら四団体に対し,東日本大震災に関するデマや噂などついて,自主的な削除をするように要請した.今回の要請は,政府の「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」の決定を受けて行われたものとのこと.この期におよんで「安全・安心の確保対策」という名前をつけるこの役人感覚に慄然とする.不安をあおっているのは事態を正確に発表しない政府自身なのだ.これに対して社民党声明を発表し,「言論抑圧に等しい行政指導は撤回する」ことを求めたが,当然のことだ.言論の自由は行使しなければ砂上の楼閣である.そう考え,またこれを書き始めた次第である.
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が「福島原発で再臨界の疑いが濃厚に」と報告している(ビデオニュースの質問に電話で答えている).2)の事態は仮定の話ではない.1号炉の温度が上がっている放射線量も増えている.保安院は計器の故障かも知れないなどといっているが何を言っているのか.最悪を想定するのだ.そしてそのときの準備をするのだ.戦後の自民党政府,現在の菅政府はそれができない政府であった.このようなときのためにこそという人々の思いが,かつて民主党政権を生みだしたのだ.ところが官僚,検察,マスコミの旧無責任体制が押し戻し,菅政権はそれに屈服,今日の事態にまったく右往左往である.まったく歴史は簡単ではない.