ドル崩落の危機

nankai2011-06-08

アメリカが,リーマンショック以降ドルを刷り増し,それによって見かけの景気回復を演出してきたが,いよいよそれも難しく,再び景気後退に陥るのではないかという懸念が表に出てきてる.今や失業率は9.1%になっている.
米国の連邦債務は数週間後に法定上限を突破する.もう国債を発行できない.そうなるとデフォルト(債務不履行)の可能性も出てくる.しかし,茶会派の力が増す共和党と事態を回避する話し合いは行き詰まっている.また,米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第2弾(QE2)という景気刺激策は打ち切りが迫っている.
日本は膨大なアメリカ国債をもっている.導入以来の消費税総額が218兆(2009年まで)に対して,政府民保有アメリカ国債は500兆を超える.これだけ震災復興に金がいるときだ.国が債権を持っていればそれを売って金に換えるのが当然なのだ.しかし,日本政府は保有するアメリカ国債を売ろうとはしない.いつまでもアメリカ国債をもたされている.
戦後日本の枠組みを決めてきた二つの仮説がある.
第1は,原子力発電所は安全であり,原発をいくつ作っても大丈夫だ.
第2は,ドルは安泰であり,アメリカ国債を買い増しても大丈夫だ.
為政者は,これを,仮説ではなく真実であるかのように,マスコミやあらゆる手立てを使って宣伝してきた.それが戦後の自民党政府だった.
今や,第1の仮説が虚構であったことは事実で以て暴かれている.原発災害はまだ始まったばかりだと考えざるを得ないほどの大きな犠牲と苦しみの最中である.第2の仮説も早晩虚構であったことが暴かれる.ドルの価値が暴落し膨大なアメリカ国債はデフォルト,この可能性が現実のものになろうとしている.日本国民の金融資産がアメリカに従属した官僚とその政府によって失われる.その一方で消費税上げだ.この1年政府は前にも増してアメリカ従属を深めてきた.この先前原のような人間が首相になると,完全にアメリカの悪代官になって,アメリカに貢ぎ続け,あげくに日本はアメリカと心中することになる.現在の政治状況を見ると,第2の仮説も,備えは何もできないままに崩れるに任すことになる.
もはやここまでは避けがたいように思われる.現代は,この二つの仮説が虚構であることが事実で以て暴かれれる時代だ.これはしかし,単に日本内の問題ではなく,近代世界そのものの問題だ.原発災害が終わりなく続き,ドルが崩壊した,そのうえでどのようにやってゆくのか,その準備を考えていかなければならない時代になった.それは本当に大きな,苦しみと犠牲をともなう問題だ.
追伸1.ここまで書いたら天木直人さんのメルマガが来て,ブログで「米国債売却問題について国民的論議をはじめる時がきた」とあるのを知った.そこで教えられたのだが,今月号の『エコノミスト』の特集は「米国債を売れ!」だ.「復興財源に外貨準備を活用せよ」等の一文も載っている.まったくその通りなのだが,この特集の裏に何があるのか.これまで「アメリカ国債を売れ」ということが記事なることはなかった.今の日本政府にそれをする腹の据わった人間はいないように思われる.今後の議論の行方を見守りたい.
追伸2:6/11の統一行動,それぞれの地での集会やデモの日程がここに載っている.全国的な中継もあるようだ.
写真はミニバラ.中国原産.1cm程の小さな花だ.