選挙結果を受けて

16日夜に急いで書いたものに18日加筆.
選挙の結果が出つつある.比例区の最終結果はわからないが,自民党単独過半数を占め,自公あわせて320議席未来の党は大幅後退,10議席前後というところか.自公民維新をあわせて戦後自民党の悲願である憲法改定も射程に入る議席である.これで当面,自公民維による,原発再稼働,消費増税,TTP推進,沖縄米軍基地固定,憲法改悪,強権政治の「右翼大連合」が進むことはまちがいない.大官僚と警察司法権力は高笑いということである.しかし,笑う者には笑わせておけばよい.そしてまた,負けるならとことん負ける方が大きな教訓を引き出すことができる.
今回の自民復活は,ファシズムの進行ということで言えば,ちょうどかつてワイマール体制の中でそれを批判したヒトラーが躍進した段階に似ている.この間日本で,反貧困で闘ってきた人々,小沢裁判に反対し闘ってきた人々,そして脱原発行動に参加してきた人々の思いとはまったく異なる結果となった.人々の過半が脱原発に賛成でも,小選挙区制を手段とする支配体制はこのような結果をもたらす.自民党は前回選挙より得票総数は減っているのに,獲得議席数は2倍である.選挙制度としての小選挙区制はこのようなときのためにある.
日本においてはこの選挙結果である.一方,アメリカは財政の崖にむかって大統領と議会で妥協ができるかどうかというところであるが,妥協といってもドルをさらに刷り続けることであって,早晩これが破産することは間違いない.安倍政権は日銀にも円を刷り続けることを求め, それで公共投資というわけである.これは日銀がアメリカ連銀と心中する道である.今後さらにこれを推し進め,こうして「戦後脱却を目指す」といいながら,その実,対米従属・経済至上の戦後自民党政治を行きつくところまですすめるだろう.が,しかし,それは世界の多極化,米国の覇権崩壊が不可逆的なものであることに気づかない,あるいは見て見ぬふりをする政治である.
これはアメリカ自体にもあてはまる.今後アメリカ経済がさらに破綻したとき,まだ一度もファシズムの経験のないアメリカが,現実の基盤を欠いたところでかつてのアメリカの夢を夢み,ファシズムに走る.ここでファシズムとは,民主主義の立前さえも捨てた強権支配と排外主義としておこう.9.11以降のブッシュの時代にすでに実践済みの法を越えた弾圧政治に走る.そして安倍内閣がこれに追従する.日米安保ファシズム同盟となりかねない.安倍自民党のこの先は,アメリカに日本国民の金融資産を売りわたしたうえで,滅びゆく帝国アメリカと心中する方向に進むのではないか.アメリカ社会と日本社会のさらなる荒廃をもたらし,国破れて山河なしの世になることになる.
もういちどそこまでいかねばならないのかも知れない.歴史は厳格であり非情である.そして人々を鍛える.議会政治そのものは真の力ではない.議会政治を操る者こそ真の力であり,そうである以上,それに対抗する人々の力を組織するしか活路はない.選挙結果でへこたれる者はへこたれよ.それでも歴史はすすむ.いま必要なものは,植草さんの提起した主権者国民連合のような運動を,日常的な運動に高めることである.それは新しい政権のすすめるファシズム的な政治への抵抗運動でもある.ドイツが脱原発を決め得たその背後には,反ファシズム白バラ抵抗運動の歴史とその中でナチスに処刑された若者の思い,それがドイツ社会の現在にまで力を与えていることを忘れてはならない.この日本でも現在の条件のもとで抵抗運動を組織することが必要なのだ.脱原発運動自体がその一環である.問題をそこから考えねばならない時代になったということである.恐らくこのような段階はどのみち不可避だった.
歴史は曲がりくねっているが必ず到達すべきとろろに到達する.先日書いた二つの道:

    1. 国民の生活を第一とし地方の再建をめざす政治.対米自立.脱原発人間原理確立.富の再配分.
    2. アメリカへ従属しその利益を優先する政治.対米従属.原発維持.経済原理優先.富の偏在増大.

は客観的なものである.紆余曲折を経ても,歴史は必ず1.の道に至る.その途中で2.に振れるときがあるなら,それはそれを通してさらに教訓を引き出し,人々がさらに団結するためである.今はまさにその過程の試練である.チェルノブイリの核惨事から5年で旧ソ連邦は崩壊した.東電核惨事から何年かはわからないが,日本の旧体制が崩壊するまで,歴史の試練は続く.旧ソ連の官僚制は1917年からであり,日本の官僚制は明治10年頃からである.日本の旧体制の方が歴史も長くしたたかである.それでも旧体制の崩壊は法則であるが,いつそれが起こるかは彼我の力関係で決まる.
私は愚かなことは二回やらねば人々の智慧としては根づかない,と考えている.それが歴史の現実である.近代日本において最大の愚かなことはあの戦争と原爆であった.そして東電核惨事は実は2回目の愚かなことなのであるが,そしてそのようにとらえる人々が過半を占めるのであるが,しかし今回の選挙はこれを覆い隠し,なかったことにするという結果である.このままで行けば,もういちど愚かなこと,かつてドイツが経験したヒトラーナチスの政治を,日本でもやることになるだろう.しかし,選挙は一つのことに過ぎない. 議会の中で決まるという事もない.であるから,本当にそこまでゆくのか,それとも東電核惨事の経験をふまえた人々の智慧が勝るのか,すべてはこれからである.未来の党の反転攻勢の足場もまたこの国民の連合した運動の中にしかない.