春の嵐

ハクモクレンが満開になり,そして半ば散っている.それに続いて,花海棠の蕾がふくらみ,桜ももう咲きはじめている.今度の日曜日は,地元のお花見である.公園に15本の桜がある.桜の木の下にゴザをひいて,ひとときを過ごす予定である.もっとも今年はまだつぼみである.三分咲きまでゆくかどうか.それでもこうして季節は移ってゆく.
そして,森友学園にからむ安倍疑獄である.これは日本近代の暗黒部を,見るものには見える形で白日の下に曝した.私は,『いま夜明け前を読む』のはじめに「今なお,世はまだ夜明け前のままである.しかしまた,近代日本を痛恨をもってふり返りるわれわれは,『夜明け前』に導かれて,新しい世界の,その扉を開け得る位置に立っている.」と書いたが,今がまだ夜明け前であることの事実が,このような形で見えることになるとは,思ってもいなかった.なぜ今,このように,安倍疑獄が表に出てきたのか.個別の事情は,豊中市議の木村真さんの,事実を解明しようと,議員としてなすべきことをされたことが大きい.それと菅野さんの奮闘である.
一般的には,それだけ資本主義が行きづまり,最後の段階に至っている,ということである.そこで現れるのが,排外主義や差別主義を掲げる極右民族主義である.オランダもフランスもそれが表に出てきている.しかし,安倍政権が,このような今日の排外主義的極右民族主義が政権を握った数少ないものであるとの認識は,われわれにも弱かった.この安倍政権の意味をしっかり押さえなければならない.
前にも書いたが,それはある意味では歴史の最先端を行っていたのである.そして,その最先端が崩れ始めた.問題が暴露され,彼らがいかに国家を私物化し,政治を腐敗させてきていたかが白日の下に曝されてきた.これが安倍疑獄の意味である.安倍はいつまで恥を晒し続けるのか.いつまで首相でおいておくのか.
同時に考えるべきことがある.日本もまた戦争で儲けようとする世界大の資本主義の輪に入り,再び戦争に人を駆り立てるため,かつての国家神道とその体制を復活させ,それを使おうとする動きがこの間続いている.今日の条件のもと,それはより悪質で悲惨である.今は戦争しか利潤を生み出さない.産軍複合体は戦争体制を維持しようと最後のあがきとも言うべき動きが加速している.岸田外相が核兵器廃絶交渉への参加を止められたのなど,その一つである.そしてこの軍産体制に進んで加わることで、森友疑獄でうけた痛手を回復しようとしているのが、橋本維新である.「日本に強力な外圧を」=自衛隊の役割強化で−維新・橋下氏はそういう意図である.かつて岸信介が辞めたあと池田勇人になり,高度経済成長にひた走った.しかし今度はもう経済成長の余地はない.まだまだ紆余曲折を経るだろう.
その上で言えば、おしなべて今の日本の為政者や東電幹部には,福島原発核惨事で,周りの環境や多くの生き物,そして人々を損ね大きな傷手を負わせてしまったという,畏れの気持ちがまったくない.人を金儲けの資源としてしかみていない.神を恐れることを知らない政治である.福島原発核惨事と今回の安倍疑獄は,もういちどこの日本列島弧の人間は,日本神道の原点に立ちかえれという神の言葉である.そのように聴きとらねばならない.
それをふまえて,この地点から,大きなものへの畏怖を失わない政治へと転換してゆかねばならない.日本神道に背いた近代の国家神道と,国家神道に回帰しようとする神社本庁日本会議,それに操られる今日の政治をのりこえなければならない.神道をふまえ,その教えをすなおな心で聴きとり,ものみな共生し循環する新しい世をひらけ.三月から四月,今の世に吹く春の嵐を,われわれもまた,身をもって受けとめねばならない.