『数学対話』を整理

nankai2007-06-11

カミキリムシを見つけた.カミキリ亜科キマダラカミキリのようである.フラッシュをたいたので,影が出来てしまった.

さて,1999年の夏からはじめた青空学園数学科も8年になります.この間書きためた『数学対話』を整理しました.解答のなかったものにはつけました.「はじめに」で『数学対話』の意図を書きました.「はじめに」の前半です.

 雑誌『数学セミナー2006年6月号に載せた拙文ウェブ上に草の根数学の広場を!」の締めで次のように書きました.

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 私は,小学校の「算数」も中学・高校の数学も大学初年の数学も,そして専門的な現代の数学も,数学として高い統一性がなければならないと考えています.そのうえで,専門化される前の,文明社会で生きるうえで必要であり,人間の土台となる数学のすべて,これが「初等数学」です.

 現代日本では,初等数学の意義と内容が定まっていません.指導要録はたびたび改変されています.根拠を示すべきところを感覚的な説明に置きかえ,そうすることがわかりやすくすることだと思いちがいをしています.それでは,わからないときにたちかえる土台がなくなり,考える力が育ちません.こうしてますます分数や関数のわからない生徒を増やしています.

 数学が現代日本に本当に根づいているとは,まだ言えません.このような現状に対して,いささかでも実践的に問題提起ができないかと考え,青空学園数学科を運営してきました.読書会は,私自身の楽しみであるとともに,この問題意識の上にもあります.

 私は,いまこそ,100年前のクラインにならって,現代日本における『高い立場からみた初等数学』が必要だと思います.初等数学を現代数学から系統的に基礎づける.それを学ぶことで数学教育に携わるもの自身がわかる喜びを知り,逆に現代数学はこの社会での存在意義を獲得する.そんな協同の取り組みがどこかではじまることを願って,筆をおきます.

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 初等数学とは,人間が成長過程で身につけ人間形成の土台とするべき数学のすべてを言います.この初等数学を「高い立場から見る」には深い数学の理解が必要で,私の力に余ります.高校数学とは,初等数学の一定の範囲,人間が15〜18歳の頃に身につけ,上述のような内容において人間形成の土台とするべき数学範囲を言うのであって,何か特別な数学があるわけではないのですが,せめて,この高校数学の周辺を掘りさげ,それがどのように成立し,どのような世界とつながっているのかを考えよう.高校生の現実には受験がある.入試問題というのは,数学的現象の呈示そのものとしてとらえることが出来る.現実を忘れないで,入試問題に現れた数学を徹底的に分析し深めていこう.『数学対話』はそのような問題意識をもって対話形式で書きためてきたものです.

 高校数学のなかに現れた数学的現象を取りあげ,それを掘りさげながら,一歩一歩考えていこうとするものです.つねに,高校生が日常出会う問題や自然現象からはじめて,できるだけ論証を飛躍させることなく,高校数学と地続きなところを逍遙したいのです.これはどうすれば示せるのだろう,この事実が成り立つ根拠は何だろう,このようなことを考えている高校生,教えていることの背景や一般化を深めようという数学教育に携わる人,数学が好きでいろいろ考えることが楽しみな社会人,青空学園数学科はこんな人々すべてに開かれています.

\TeXで書きためた原稿を組むとA4版で650頁を超えていた.これをhtml ファイルに一から直すのは大変で,これまでのものを組合せ,必要なものだけ html にしました.リンクの関係がうまくなっていないところもありそうで,それで,PDFファイルでも読めるようにしました.次は『高校数学の方法』第4版を準備する.これはしばらくかかりそうだ.