『高校数学の方法』第4版

『高校数学の方法』を整理し,第4版とした.HTML ファイルを整理したが,今回はPDFファイルも落とせるようにした.10題ほど問題を増やし,本文も校訂した.第3版にあった「なぜ勉強するのか」は除いて,数学の勉強方法に絞った.「なぜ勉強するのか」はもっと掘りさげ,別にまとめたい.「はじめに」で次の一文を加えた.私の考えるところです.

 高校で数学を学ぶ意義は何か.それは次のようなことである.

 第1 数学を使いこなすための基礎を身につける.
 現代文明の土台には数学がある.身の回りにあるさまざまの道具,テレビ,パソコン,携帯電話,鉄道,そして橋やビルなどあらゆる建造物,すべて数学なしには存在しえない.経済活動もまた数学なしに組織することはできない.あるいは経済現象の解析など,社会科学もまた数学が用いられる.このように,数学は文明の基本的な方法なのである.数学の基礎を高校で身につけることは,現代社会で生きていくうえで不可欠である.高校では,数学の基礎を系統立てて順次分野別に学ぶ.
 第2 論理的に考える力を身につける.
 問題の状況,つまりそこにある数学的現象を適切にとらえ,与えられた条件から一定の結論を導く.これが問題を解くということであり,証明である.証明するということ自体が,近代の人間の必須の方法である.論述や弁証が典型的に用いられる数学を学び,結論の根拠を論述したり,証明すことをとおして,筋道を立て,予測し,論証する力をつける.その結果,数学だけでなくすべての学科で力が伸びる.

 以上.これが高校で数学を学ぶ意義である.

 大学入試は,この2つの面から大学での勉強にたえうるかどうかを試すものである.その力の度合いによって選抜しようということである.だから,入試数学とっても何か特別な数学があるわけではない.学問としての数学を正面から勉強することが,結局は力をつける早道である.ひとつの問題を深く考え,つねに論証を検証しよう.このような勉強の積みあげの結果として多くの問題が解けるようになる,これが本当の勉強である.他に楽な道はない.

 そのための方法論が『高校数学の方法』のめざすところである.高校数学とは,人間が15〜18歳の頃に身につけ,上述のような内容において人間形成の土台とするべき数学の範囲をいう.社会生活を送るにあたって必要な内容であり,また大学初年級の一般教養数学とあわせて,専門分野の勉強の前提となる内容である.

 論理的に考える力をどのようにしてつけるか.この力は,数学の各分野の勉強をとおして身についていくのだが,分野別の基礎学習に加えて,数学的考え方,つまり数学の方法論を意識的に学べば,論証力が大きく飛躍する.

 そこで本書は,一通り分野別の学習をした人を対象に,数学のさまざまな考え方や方法論をとりだし整理し,演習問題を提供する.数学では,分野は違うが用いる方法や考え方は同じ,ということがよくある.高校数学の方法として整理されるものはそんなに多くない.それを取り出して学ぶことで,方法を意識して問題を解くということを身につけ,問題解決能力と論証力,つまりは数学の力を飛躍させようとするものである.

 さあ,高校数学を学問としてしっかりと学び,この時代を生きる智慧と力をつけよう!