泣いて馬謖を斬る

nankai2007-11-03

写真は,風が寒くなってくるなか,日だまりでじっとしているバッタです.残り少ない命をかみしめているようです.さて,石原東京都知事が,先日の日本シリーズ終戦のことで次のように発言しています.

「泣いて馬謖を斬った」石原知事、落合監督を絶賛
 トップのね、つまり、球団の経営というか実績というものを知っている球団のCEOとしてはね、私はやっぱり落合というのは見事だと思う。本当に。泣いて馬謖を切ったんですよ。

ところでこの用法は正しいでしょうか.国語辞典には次のようにあります.国語大辞典(新装版)小学館 1988.

ば‐しょく【馬謖】 
中国三国時代蜀漢の武将。湖北の人。字は幼常。才器を丞相諸葛亮に愛され、北征に際し先鋒(せんぽう)の総大将に任じられたが、軍令にそむいて敗北し、斬罪に処せられた。「泣いて馬謖を斬る」の故事で知られる。(一九〇〜二二八)

中日の山井は何も指示にそむいて失敗したから代えられたのではないですね.十分役割を果たし,交代したのです.完全試合をさせたかったという人もいれば,あれでいいのだという人もいるでしょうが,いずれにせよ落合監督は「泣いて馬謖を斬った」のではありません.「泣いて馬謖を切ったんですよ」という知事の用法は誤りです.「切る」と書いたのは記者の方かも知れませんが,これも誤り.センター試験も近いので,この手の発言にはくれぐれも注意し惑わされないようにしてください.「泣いて馬謖を斬る」の正しい用法はどれか,という問いの選択肢の一つに入れておきたいような誤用例でした.