指導要録改訂

指導要領がまた変わる.文部科学省は15日.小中学校で教える標準的内容を定めた学習指導要領の改訂案を発表した.今よりも理数の時間が増え,いわゆる総合学習の量が減る.ちなみに,円周率は3.14に戻るそうだ.2次方程式の根の公式も中学で復活である.朝令暮改の見本のような政策だ.
今のような格差のある社会で教科の内容を増やすことは,いよいよ落ちこぼれる子供を増やすことにならないだろうか.80年代の落ちこぼれ問題からゆとり教育が導入されたのだ.そのときの問題は何も解決していないばかりか,自己責任論がひろがり,教育格差はより大きくなっている.普通に公立中学―公立高校といって,それで落ちついて勉強できるようにならなければだめだ.今の日本の中学入試は,子供達の豊かな可能性を削りとってしまうものになっている.
1)才能は個人が私有することなのか,みなが生みだしたものであり世のために生かすべきものなのか.
2)教育内容の裁量をもっと学校や教師に任せるのか,国が上から何もかも統制するのか.
3)教育の仕事に誇りを持てるのか,働きがいをもつことができない仕事なのか.
4)色刷りできれいだが内容が薄っぺらな教科書か,つねに基本に立ちかえって考える質も量もある教科書か.
こういう基本をもっと議論しなければならない.先日のスウェーデンの教育改革と比べると,今回の指導要領改訂は余りにも小手先の改革で,意味の少ないものであることがわかる.私の考えは『私の考え,私の願い』に書いた.
この先,高校の指導要領もまた変わるだろう.数学の内容もまた動くかも知れない.しかし,指導要領がどうであれ,高校時代に学ぶべき数学というのは,あるのだ.高校生の皆さんは,政策がどうであれ自分の力は自分でつける,という気概をもって,能動的に勉強をつづけてほしい.