『数学対話』に「量と数」

『数学対話』−「高校数学の土台」に「量と数」を追加しました.昔,高校で教えていたときからそのままになっていたことを,今年に入って冬期講習が終わったときから考えはじめたものです.その冒頭の一節より.

私が教員をはじめた頃,クラスのなかに分数計算ができない生徒が何人かいた.そこで分数の計算の確認をやろうとすると,今度は,それはできるという生徒が面白くない.早く先に進んでくれという.若かった私は大いに悩んだものだった.そこであるとき,分数はできるというがなぜ分数の乗法は分子と分母をそれぞれかけ,除法は割る側の分数の分子と分母を逆にして同様の操作をすればよいのか.それはなぜだか理由が説明できるか? こちらから質問した.答えられるものがいなかった.そこでもういちど,数の乗法や除法を,基本に立ちかえって授業した.今度は誰にとっても初めてのことなので,みなよく聞き考えた.ここから私の授業が進んでいったのだった.
これは貴重な経験だった.どんなクラスにも,わからない生徒とすでに理解している生徒がいる.そのとき,理解していると思っているその根拠を問う.多くの場合,わかっているかいないかの違いは,方法を知っているかいないかの違いに過ぎず,方法の根拠まで理解していることは少ない.そこで一歩原則に立ちかえり,方法の根拠から一緒に考える.これは,受験生に数学を教える今も,私の基本的な授業方法である.

量と数の問題についてとりあえず概略をまとめただけです.『数学対話』の「高校数学の土台」の部分をもういちど再編して『高校数学の構造』のような題名で書き直したいと思っています.が,これは時間がかかりそうです.
この間考えたことをもとに『私の考え,私の願い』に加筆した.