区分求積法

「区分求積法」とは何かということについて,高校数学IIIではこれが正しく用いられていないように思われる.
高校の参考書では\lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{1}{n}f(\frac{k}{n})=\int_0^1f(x)dxを「区分求積法の基本式」ということが多いようである.そのため,高校生は左辺の和の極限が右辺の定積分で表されることを「区分求積法」というと考える.しかし「区分求積法」とは「アルキメデスの求積法」のように,面積を細分して数列の和を計算して求めるなり,なんらかの方法で左辺を計算することをいう.これが原始関数の値の差で計算できるかどうかは別の問題である.左辺の和を(なんらかの方法で)計算することが求積法なのだ.
この和はリーマン和に他ならずこれが定積分に一致するのは積分の定義そのものである.つまり上の等式で右辺は左辺によって定義されるものである.この定積分が原始関数の値の差F(1)-F(0)で求まることが,ニュートンの時代に発見された基本定理なのだ.
このように明快なことがなぜ日本の教科書では混乱するのかというと,定積分を原始関数の差で定義するからだ.こんな定積分の定義は,確かめたわけではないのだが,世界中でも日本くらいなものだろう.そのため関数のグラフで挟まれた部分の面積が原始関数の差で表されることの発見の意義を伝えることができない.これがどれくらいすばらしい定理であるか,これを実感するためには,左辺の和をいろいろ工夫して求めてみることが大切なのだ.数学IIでは面積を微分すればf(x)になることは示されるのであるが,このことが数学IIIとつながっていない.
高校数学の教育に携わる者は,まちがった教科書の定義に迎合せずこれを正して,人類の発見とその歴史を伝えていくことが大切だと思う.
その後追記.この問題を解明するためもあって『解析基礎』が書かれた.