小中高生の暴力6万件 3年間で7割増

今朝の新聞に「小中高生の暴力6万件 3年間で7割増」が出ていた.3年で1.75倍である.内容は記事を見てほしい.ウエブの記事には出ていないが,新聞の方には次の記事も出ていた.

文科省教育委員会は「感情がうまく制御できない」「コミュニケーション能力が足りない」といった子供の変化が背景にあるとみる.……「子供の思考がパターン化され,深く考えられなくなっている」と危ぶむのは国語作文教育研究所所長として,35年間子供の作文を指導してきた宮川俊彦さんだ.「気持ちを表現する言葉の幅が狭くなっている.表現できない出来事とぶつかった時,感情や行動が激化してしまうのではないか」

私は文科省が人ごとのように言うのに賛成できない.「子供の変化」を誰が作ってきたのか.短絡的に因果関係をつなぐことはできないし,もっと大きななかでとらえないといけないが,大学進学をめざす高校生の表現力や読解力の低下を作ってきた一つの要因がセンター試験のようなマーク式テストだ.その対策で受験勉強期を過ごした人が今度は教員になる.手で書いて考え,さまざまに表現する指導は,まずその人がやっていないと難しい.
もう一つ,テレビの影響も大きい.民放の放送を見ていると,特に何かの事件や事実を報じる時に,まず状況の放映があり,そのうえで「さてここでどうなったか」といちばん関心を引きつけたところで,突然にCMが入る.これでは思考の持続がそこで断ちきられる.私などは腹を立ててそこでチャンネル変え,しばらくしてもどすのだが,するとCMのあとにもういちど状況説明からはじまる.子供がテレビかけっぱなしの中におかれると,「思考がパターン化され,深く考えられなく」なるのは当然である.なぜあれを放置するのだろう.民放はどれだけCMまで視聴者を引きつけたかが重要なのでそうするだろうが,これは何らかの禁止措置をしないと,ますますひどいことになる.
テレビで言えば,最近高校生の空間把握力の低下もそこに要因がある.われわれの子供時代はラジオだった.ラジオだと自分で場面を想像しなければならない.これが言葉から場面を構成する訓練になる.ところが今はすべてテレビである.画像は向こうからこれでもかというように飛び込んでくる.自分で構成する必要がない.すると問題文を読んで空間図形を想像できなくなる.
等々,文明の利器が進むほど人間は退化する.今日の新聞報道はそれが行きつくところまで来ていることを教えているのかも知れない.私は明治以来,日本の文教政策の基本には愚民政策,つまり,「自分では考えずに上のいうことをよく聞いて黙ってついてくる」子供を作る政策が一貫してあるように思う.しかしそれはたとえ統治する側からいっても長期的には行きづまる.実際,社会がどんどん崩れていく.
そこで人間はどうするのか.このような事実をおさえて,そのうえで自分で考えていくしかないのだが.昨日の掲示板に青空学園のこころざしを取りあげてくれた人がいた.その一節.これは10年前に書いたことだが,状況はますますひどくなっている.

わたしたちは,青空学園を,ともに学びあい高めあう協同の場として育てたいと考えています。今日の教育制度は,人に生きる力・考える力をつけません。教育課程はどんどん悪くなっています。その結果,青年は考える力を失いつつあります。青空学園は,このような今日の教育政策に抗して,高校生と教員自身が,まず考えそして交流し対話することをとおして,自からの力を自分でつける,自ら努力して考える力をつけていく,そんな場にしたいのです。

「自からの力を自分でつける,自ら努力して考える力をつけていく」.そういう時代になりつつある.