ファシズムに向かう?アメリカ

nankai2010-11-26

 先に「秋深まる」でアメリカがファシズムに向かうのではないかとを書いた.そこで「時代は厳しくなる.それだけ面白くもなる」といったが,「面白くもなる」は取り消し.事態はもっと深刻だ.アメリカの現状について,私の見解に対してその根拠となること述べた講演会が先日東京であった.11月17日,カレル・ヴァン・ウォルフレン氏が日本記者クラブで講演した.その要約がNICOSさんのブログにある.講演の冒頭,彼は次のように言う.要約はNICOSさん.上記ブログより.

 …米国の制度機構が制御不能に陥り、国全体が結果として制御不能となったためなのである。これは政府が関東軍を制御しえなった1930年代の日本にたとえることができる。アイゼンハワー大統領は離任演説で軍産複合体の肥大化と民主主義の危機について述べ警鐘を鳴らしたが、彼が予期したよりもずっと軍産複合体は成長を続けた。同じことが米国の金融産業についても言える。もはや政治的に制御が不能となっているのである。オバマ大統領は今さら何をしても遅すぎるといわざるを得ない状況である。

 これは支配機構の問題として言われているが,その右傾化を支えるのが茶会運動などの草の根保守運動である.これは大きな問題だ.上からの制御不能と下からの保守運動.これはファシズムに至る.この先ものすごく大きな混乱が待ち受けているのではないか.
 先日小沢氏が民主党の混迷に関連して,若手議員に対して,「過去のような危険な道に進む可能性があるのが怖い」と語ったと報じられた.確かにその通りなのである.現実の過程としてファシズムアメリカに発するのではないか.民主党共和党もだめだという議会主義への不満をネオコンらが扇動し,産軍複合体の政治が茶会運動とあわさってファシズムに向かう.それが日本も飲み込み,国内的にはアメリカではマイノリティへの暴力的抑圧,日本ではアメリカからの独立を求める市民や在日外国人へのあからさまな排外主義,まさに「非国民」が横行.対外的には軍事演習のような挑発をくりかえしながら,軍事行動を拡大.それがどのようなものになるかは予測できない.
 戦前の日本が結局は軍国主義の敗北という形で終わったように,ファシズムアメリカは必ず解体される.しかし超大国ファシズムは,崩壊にいたる過程であまりにも大きな犠牲が出る.今日のイラクやアフガンの現状自体がすでにその一部だ.この先どのような政治が出現してゆくかは,彼我の力関係が決める.孫子の代のために,やはりわれわれの世代は,迫り来るファシズムに対して,なし得ることをしなければならない.これがの杞憂に終われば,それでよい.しかし,どうもそういうことではないように思われる.
 追伸(12/1):昨日ウォルフレン氏の近著「アメリカとともに沈みゆく自由世界」(徳間書店)を買う.じっくりと読んでみるつもりだ.また,12月5日には東京日比谷公園大音楽堂で集会とデモがある.その後夜ウォルフレン氏の講演会もあるとのこと.私は土曜も月曜も授業があり,日帰りも難しくいけないが,これを読んでくれた関東在住の人の参加を呼びかける.写真は毎朝犬の散歩に通る公園の脇にあるイチョウ.すっかり黄色くなっている.
 追伸(12/8):講演会の報告がNICOSさんのブログにある.ここからたどれば録画も見られる.日本の対米従属をこのように裏付けをもって論証し,「諦めるな」と呼びかけるのは画期的だ.
追伸(12/10):講演会の抄訳が出ている.「カレル・ヴァン・ウォルフレン教授講演会」.