II期終わる

2010年度のII期が昨日で終わり,今日は1時間だけ授業があった.去年,今年とこれまで以上に粘り強く考える生徒が増えて,おかげでこちらも別解が増えたり,教材面からも新しい発見があって,たいへん楽しい本科授業であった.最後の週に京都教室で,08年の早稲田の問題を追加して演習し,原題に加えて,授業の終わりに(3)も追加して出した.それが火曜日だった.こちらも計算していなくて,「まだできていない,できたら見るのでもってくるように」ということで終わったのだが,さっそく土曜日にできたともってきた人がいた.それは,媒介変数表示も使わずに,積分過程で変数変換をくりかえして,正しい答えに至っていた.青空学園の解答では媒介変数表示を用いるものを作っておいた.彼の解答も紹介したいところだ.
この問題に関しては傘型分割法を知っている人がいた.掲示板でもこの方が簡単です,という投稿があった.実は私は傘型分割法を知らなかったのだ.それでどんなものかとそれが載っている本を見たのだが,解説に厳密なものはなかった.傘の面積をx軸方向に積分すれば体積になると書いてあるのだが,これは結果としてそうなるのであって,はじめから明らかなことではない.掲示板にも書いたのだが,「傘型分割法」,「バームクーヘン法」,「はみ出し削り法」など受験業界でしか通用しないもっともらしい命名には賛成できない.方法の成立する根拠が大切であるのに,結果としての計算法だけを覚えることになる.それよりも体積の定義にしたがって,必要な変数を導入し,定積分を組み立てていって求積する方が,はるかにしっかりした力がつく.
さてしばらく授業は休み.毎日1時間は歩こうと思うが,できるだろうか.M3Wの添削と採点,二カ所からの問題作成(一方は入試関連なのだが,他方は公務員試験関連などあまり入試問題ではない),冬期講習の準備,来年のテキスト整理もある.すべて机仕事だ.それをこなして,そのうえで射影幾何の基本定理あたりまで論証を進めたい.いま書いているのはまったく教育的なものではなく,将来教材としても用いることができるものを作るための準備として,一から射影幾何を構成しているのだが,それが面白い.よく公理的方法は教育的でないといわれるのだが,公理的に再構成してはじめてその数学的現象をしっかりとつかむことができる.今年の初め頃「デザルグの定理」を作った.これは1966年の京大入試問題を見直すところから,デザルグの定理を見出すものだ.が,高校数学を離れない範囲で書いていて,デザルグの定理の本当の意味まではもちろん対話できていない.それから1年いろいろ勉強した.
それと少し時間をとって,現代世界の問題を掘りさげたい.パスカルとは誰か,ということなのだ.関連してバディウの『哲学宣言』を読んでいる.彼が『サルコジとは誰か』のなかでいう「仮説としての共産主義」とその現段階という問題提起を,非西洋の側からいうとどういうことになるのか,そしてそれはそれぞれの地で当面する問題とどのようにつながるのか,このあたりを考えたい.フランスでは昨年『仮説としてのコミュニズム』が出たそうだが,いつ訳が出るのだろう.それに訳すときは「コミュニズム」などと曖昧にせず、はっきり「共産主義」と言ってほしいところだ.同じ共産主義の理念をもってやってきたはずなのだから.
現代世界の矛盾が日本の民主党内の対立にも現れ,それが少しずつ煮詰まっている.その帰趨を見ながら考えてゆきたい.