汚染水は漏洩だけなのか

参院選挙の後になって,東電はようやく汚染水が海に流れ出ていることを認めた.毎日およそ40万リットルの水がロッドの過熱を防ぐために原子炉心に注水されている.汚染された水が原子炉基礎部に漏水し,コンクリートの裂け目を通じて地下水と近隣の海水に拡がっている.
これは事実だろう.これ自体すでにどうしようもないに近い段階だ.しかしその裏でより深刻な問題が隠されているのではないか.それはメルトダウンし原子炉容器を突き破って地中にある溶け落ちた核燃料が,地下水脈に触れているのではないのか,という問題である.このより深刻な問題を,汚染水漏洩問題で蓋をしているのではないか.
小出さんはすでに昨年,2012年6月に次のように言っておられた.『人民新聞』より.

1〜3号機は、核燃料棒がメルトダウンして、圧力容器を突き破り、下に落ちています。その先がどうなっているのか誰にもわかりません。見に行くこともできないし、知るための測定器も配置されていないので、全くわかりません。
私は、溶け落ちた燃料が、建て屋のコンクリートも破って地下水と接触しているかもしれない、と思っています。もしそうなら、高レベル放射能が地下水に流れ出てしまうので、建て屋の外側に深い壁を作ることを昨年5月から提案し続けています。残念ながら、東電は何もやっていないという状態です。
放射能を閉じこめる最後の防壁が、原子炉格納容器ですが、1〜3号機は、格納容器のどこかが壊れていることは確実です。核燃料被覆管の材料であるジルコニウムが水と反応してできた水素が、建て屋に漏れだして爆発したのですから、疑いようがありません。ただし、格納容器が完全に崩壊したわけではないので、まだまだ大量の放射能が、中に存在している状態です。

2013年7月18日,3号機建て屋から水蒸気があがるということがあった.このとき,核燃料と地下水脈との接触が広範に起こり,何らかの反応があったのではないか.小出さんが心配しておられた「建て屋のコンクリートも破って地下水と接触」がこのとき起こったのではないか.それから急に汚染水漏洩が言われるようになった.事故が起これば,それに対しては,最悪を想定して最善を尽くす,ということでなければならない.しかし東電は逆に,小出さんが言われるように「その先がどうなっているのか誰にもわか」らないことを逆手にとって,この核燃料と地下水脈の接触とそれによる汚染水大量発生の問題を隠してるのではないか.
もともと,福島県は地下水脈の豊かなところである.海の幸,山の幸に恵まれた地であった.その地下水脈の上に原発が建てられた.地下水脈は互いに広い範囲でつながっている.小出さんがいわれるように,最悪に備えて「建て屋の外側に深い壁を作ること」.地下水が流れ込まないように,出ていかないように,深い壁を作る.もとよりたいへんな工事である.しかし,提案はなされ,代案はなかった.ならやるしかなかった.にもかかわらず,この2年間何もなされなかった.これは再びの人災である.いや,再びの犯罪である.
写真はホテイソウの上のバッタの幼虫.
追伸:高知の藤島さんがより明確に同じことを言っておられるのを,cangaelさんのところに教えてもらった.一日も早く,小出先生なども入られた福島対策委員会を設置して,政府がしないのなら民間に設置して,すべての情報を東電に公開させ,何が出来うるのかを考え,実行すべきである.
追伸2:新聞「スポニチ」の記事「汚染水めぐる首相発言に福島から「あきれた」「違和感」」は今の新聞界では立派.そこにある小出さんの言葉「安易な発言をしても、約束を破ることになるだけだ」は遠からずその通りになる.