金曜行動と「原子力の闇」

今日は師走の金曜関電前抗議行動.さすがに寒い.それでも50人くらいの人は集まっていた.選挙後の再稼働に向けた動きへの緊張もあり,寒さに負けず声を合わせてきた.ここからの輪の広がりで明日6日はあべ?NO!デモ第2弾!である.そのツイッターFaceBook.地図あり.こちらは昼は地元の用事で夜は授業があり行けないが,若い人らのこのような行動には希望がある.
さて,この二週間ばかり,時間を見つけて鬼塚英昭さんの本を読んできた.これらの本を出している成甲書房ヴィキペディアには「陰謀論を中心に発行する。」と書かれている.ここが出している他の著者の本を読んだわけではもちろんないのであるが,少なくとも,私の読んだ鬼塚さんの二冊はいわゆる陰謀論ではまったくない.1冊目は『日本のいちばん醜い日』(成甲書房、2007.8.5)である.出版社の言葉では次のように紹介されている.

1938年大分県別府市生まれ。別府鶴見ヶ丘高校卒業後、上京。中央大学法学部で学びながら数多くの職に就く。学費未納で中退後、故郷・別府にて家業の竹細工職人となる。生業の傍ら、国内外の膨大な数の関連書を渉猟・読破、関係者にも精力的に取材を重ね、郷土史家として私家版の歴史書、『海の門』『石井一郎の生涯』『豊の国の竹の文化史』『20世紀のファウスト』を書き上げる。その研究の途次の1995年、昭和天皇九州行幸時の「別府事件」を偶然に発見、以来10年にわたる歳月をついやして上梓した前作『天皇のロザリオ』(上下、小社刊)につづき、明治期から現在までの多彩な史料を駆使して「日本の隠し事」を暴いたのが本書である。

本書は,敗戦前後においてポツダム宣下抜け入れに反対する陸軍の反乱といわれる事件などの真実を伝えるものである.前半はやや冗調に感じたが後半の近代日本史のまとめた部分は一気に読ませる.鬼塚さんは本書の最後の部分で,

私はここで私なりの結論を書くことにする。原爆投下は完全に避けられた。少なくとも、ポツダム宣言が出たときに、天皇がマイクの前に立ち、国民に詫びの言葉を述べ、「わが身がどうなろうとも、この戦争を敗北と認め終戦としたい。ポツダム宣言を無条件で受け入れる」と言えばよかった。どうして言えなかったのか。

と書く(改行追い込み).これに答えたのが本書である.私は青空学園だよりに書いたことを下に書き足して『震災以降』としてまとめはじめているが,そのなかの「昭和天皇」で「先の十五年戦争は日本の歴史において未曾有のことであった。南太平洋から東南アジア、東北アジア、中国大陸と朝鮮半島、いわば日本列島弧に住んでいる人間の祖先の地のすべてに兵を進めた。それを統合し戦争を進める結節点に昭和天皇があった。そして大敗北をした。敗戦処理の過程で、天皇は自ら責任を負うのではなく、臣下を戦犯として差し出し、自らはアメリカに命を乞うて皇統を守ろうとした。」と書いた. 本書はそれを歴史家の手で、事実を積み重ねて論証するものである.
2冊目は『黒い絆 ロスチャイルドと原発マフィア』(成甲書房、2011.5.30)である.出版社の言葉では次のように紹介されている.

広島・長崎への原爆投下に至る核兵器問題はライフワークともいえる重要なテーマであり、今次の「3・11フクシマ原発重大事故」の陰に存在する日米の原子力利権を執拗に追跡してきた。本書は積年の調査・研究の集大成であり、日本人が決して知らされることのない「原子力の闇」を暴いた必読書である。

天皇とそれを取り巻く官僚体制が,ポツダム宣言が出た以降もそれを受け入れず延命工作に時間を費やし,沖縄や広島・長崎,そして大阪や東京の空襲の犠牲の上に,敗戦後を生き延び,それが国際的な金融同盟の原子力政策を受け入れ,今日に続く戦後の原子力村を形成した.そして鬼塚さんは次のように結論づける.

私は、国際金融マフィアが同時に原発マフィアであり、また、石油マフィアでもあると書いてきた。日本人は戦後、独立国家となったと思い込んでいるが、真実は、アメリカに巣食う彼ら国際金融マフィアの思いどおりに日本は動かされてきた。世界の原発マフィアの意向に添って日本の原発マフィアが、この狭く、地震の多い国に五十五基もの原発を造ってきた(一基は廃炉作業中)・そして、二〇三〇年までに十四基増やし、原発による電力への依存率を五割まで上げるという政府の方針が確定している。

今回の選挙で安倍が再び政権につけば,再稼働に向けて一気に歩みをはやめるし,改憲を正面から掲げはじめるだろう.そして金融緩和を継続し,国民の年金資産を証券に投資して株高を演出し,その実それを通して国民資産を「国際金融同盟」にさしだす.そのあげくに日本はいわゆる失敗国家に転落する.そこまでいかなければ反転はないのか.しかしそれでは犠牲が大きすぎる.そして3冊目として,この12月12日発行の『天皇種族・池田勇人 知るのは危険すぎる昭和史』(成甲書房)を予約した.これに教えられることも多いと期待している.
それにしても,日本歴史学会は,古代史についても近代史についても,歴史を覆い隠す役割を演じている.とりわけ天皇制の起源と近代天皇制について,それが顕著である.このような学会のあり方は,原子力は安全だということを説く関連諸学会のあり方と同じである.いずれもが,原子力村=旧体制を守るための宣伝機関になり果てている.
それに対して,在野の歴史家が事実を一つ一つ明らかにしていっている.古代史における『倭王たちの七世紀―天皇制初発と謎の倭王』(小林惠子、現代思潮社、1991),『興亡古代史―東アジアの覇権争奪1000年』(小林惠子、文藝春秋、1998),『誰が古代史を殺したか』(室伏志畔、世界書院、2014)の労作.近現代史における『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治、集英社インタナショナル、2014.10.29)とそして鬼塚さんの労作.これらに共通するのは,日本列島弧の歴史を、古代史では東アジアやインドとの交流,近現代史では世界のなかにおいて,それぞれ考えてゆこうとする基本姿勢である.
このなかで,鬼塚さんの仕事は,近代天皇制に関して,支配層の宣伝の結果,世間で何となく信じられていることを,根拠をあげて覆す仕事であり,歴史学の本道をゆくものだと思う.鬼塚さんが在野の歴史家として客観的な事実を解明してこられた.歴史学会やあるいは大手の報道機関が取りあげない学説に対して,世間はそれを「陰謀論」だと決めつけることで無視しようとする.しかし,このような仕事の積みあげが,事実を通して世を動かしてゆくだろう.
これまでの経済を第一とする資本主義の時代には,支配階層のなかにこのような秘密結社的組織がいくつもあり,明治以来の近代日本支配層もこれに深く関わり,天皇もまたその例外ではない.これは表からは隠され続けてきた.これがこれまでの世の在り方であった.在野の歴史家が解明した,このようなさまざまの組織をつかみ,その意味をおさえつつ,われわれはそれとは異なる道を,つまりは秘密組織や裏工作や謀略やそれこそ陰謀や,そのような方法を一切とらない道を,歩まねばならない.新しい時代は,古い時代とは異なる方法でつくり出さねばならない.かつての階級政党は,その時代の限界であるとはいえ,古い方法に頼った.
今回の選挙では,ようやくに安倍を倒すための共同行動が生まれてきた.いろいろな違いがあっても,敵に対して共同歩調をとる芽が出てきた.これが全国レベルでできればいいが,今回はできていない.だから,結果を左右するところまではゆかないかも知れないが,この経験は次に引き継がれる.このときに,全選挙区に候補を立てた共産党の自己満足は,滑稽であり悲劇でもある.無力な湯気ぬきとして今回この党は議席を伸ばすだろう.そして反対派を配置しながら安倍は軍国主義に突っ走る.共産党がこのようになるのはなぜか,それもまた鬼塚さんが解明していることを指摘しておきたい.
鬼塚さんが解明した「日本の隠し事」と「原子力の闇」.日本の闇.この闇はしかし,確実に解明されつつある.歴史として解明されることが,ひとびとがこれを乗り越える前提である.解明されつつあるからには,この闇の向こうに光がある.しかしまた鬼塚さんは

「がんばろう、日本」「原発反対」そんな言葉を叫ぶだけでいいのか、日本よ。日本は浜岡原発の大事故を、首都壊滅の日を、きっと近い将来迎えるにちがいない。

といわれる(改行追い込み).それはそうなのだ.ではどうするのか.それに対する一つの生き方が,若者デモであり,ささやかではあるが共同行動の深まりだ.いまはまだ量より質の段階である.一人一人が生き方を問い,譲れない原則を守って,理念をもって生きる.このような質の積みあげが必ず量に転化する.爆発の時は来る.それを信じて倦まずたゆまずゆくしかない.関電前で声をあげながら,いささかとりとめなくそんなことを考えた次第であった.