定積分の定義

ある生徒から,定積分をリーマン和で定義するということはわかったが,原始関数を用いるのも定積分の一つの定義の仕方ではないのか,と質問があった.これについては,いや原始関数を用いるのは定積分の定義になっていない,と答えておいた.その意味を書いておきたい.今の教科書には次のように書かれている.

区間[a,b]で連続な関数f(x)の原始関数の一つをF(x)とするとき\int_a^bf(x)dxF(b)-F(a)で定める.
そして,定積分\int_a^bf(x)dxを求めることをf(x)aからbまで積分するという.

これを読んで何か変だと気づかないだろうか.bを変数に変えて定積分\int_a^xf(x)dxを求める,ということを考えるとこれはまさに原始関数を求めることである.ところがその原始関数を用いて定積分は定義されている.「積分する」とはすでに定義に用いたものをもう一度求めることなのか? 定義に用いた原始関数はどのように求めたのか? 原始関数を用いて原始関数を定義してもそれは何かを定義したことにはならないのではないか.
また「連続な関数f(x)の原始関数」がことわりなく使われているが,そもそも原始関数は存在するのか.存在するかしないか確定しないものを用いて定義することはできない.
さらにこの定義では積分より微分が先にあり,微分を用いて積分を定義している.しかし歴史的にも面積などは微分とは別に考えられ求められてきたように,定積分の定義は微分を用いないでそれ自体として定義しなければならない.それがリーマン和による定義なのだ.その上で,この定積分微分の逆,原始関数の値の差で表されるというのが微分積分の基本定理なのだ.