ゼータ関数の値

水曜日に京都のMKXで90年の東工大の問題を勉強した.
何人か11月15日のNHKスペシャル「魔性の難問 〜リーマン予想・天才たちの闘い〜」を見た人がいて,ゼータ関数のことも話題になった.東工大の問題を用いるとζ(2)が計算できると言う話しはしたが,そこまでやる時間がなかった.それでその計算を載せておいた.ついでにζ(4),ζ(6)も計算した.これを繰りかえせばζ(2m)は順次計算できていく.有理数\pi^{2m}の積になることはまちがいない.ところが,ζ(3)のような奇数の値になるとまったく分からない.やっと1978年にζ(3)が無理数であることが証明できたというところだそうだ.その先は分かっていない.ゼータ関数は不思議な関数である.数論への応用については「素数の分布」で少し触れたが,関心をもった人はいろいろ勉強を進めてもらいたい.
この東工大の問題は1990年である.この頃90年前後,京大,東大や東工大で数学的にも奥行きのある問題がよく出題された.『数学対話』などでその背景を深めた問題の多くはこの頃のものだ.最近の入試問題は奥行きがなく,底の浅いものが多い.高校生の論述力が落ちてそんな問題を出しても入試問題にならないということもあるだろうが,難易を工夫して歴史的な背景のある問題をぜひ出題してほしいと思う.
追伸:ζ(2m)の公式はオイラー以来知られている.それを導くのに関数論が必要だ.それを上のやり方,あるいは「ゼータ関数の値」のやり方を一般化して初等的に求められないのか、いろいろ工夫している.ベルヌー数がどこで現れるのかまだつかめていない.それにしても

\zeta(2)=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots=\prod_{p}\frac{1}{1-\frac{1}{p^2}}=\frac{\pi^2}{6}

とは何という等式だろう.自然数にわたる和,素数にわたる積に円周率が現れる! この不思議!
追伸:この問題は偶数での値について一般的で初等的な証明がえられた.「ζ(2l)を関・ベルヌーイ数で表す」.