『ポストモダンの共産主義』を読む

この2,3日かけて『ポストモダン共産主義』(ちくま新書)を一気に読む.著者はスラヴォイ・ジジェク.1949年生まれ.同世代であり,1968年の時代のなかで考えはじめた人である.旧ユーゴスラビア連邦スロベニア出身の思想家,哲学者にして精神分析家である.副題が「―はじめは悲劇として,二度目は笑劇として」である.これは歴史に登場した共産主義のことをいっているのかと思うが,違う.「はじめ」は9・11ツインタワー崩壊のあの事件.二度目は二年前のリーマンショック新自由主義アメリカで起こった二つの事件をいっている.これだけでも,ずいぶん人を驚かすような書きぶりであることがわかる.
パスカルの思想を大きくつかみ直すうえで,いくつかの視点を掘りさげたいと思ったのがこれを読んだ理由である.面白かったし,青空学園のような試みもまた,まったくささやかで微力ではあるが,草の根の学びとしてやることの現代的な意味も教えられた.今ここで本書の内容について書くのは難しい.しばらく反芻して暖め整理したい.
昨日の名護市議会選挙で辺野古移転反対派が多数になった.沖縄タイムスの「敗れたのは日米政府だ」は実に立派な文章だ.埋め立てには現地議会の受け入れ決議が必要であり,それはありえないことになった.それどころか,おそらくは反対決議が可決される情勢になった.それに対して北沢防衛大臣などはあいかわらず『普天間移設「丁寧に説明」』等と言っている.しかし今回の選挙結果は,防衛省や外務省の説明が何を意味するかを現地が十分判断したうえでのものであり,辺野古移設はまったく不可能である.政府とアメリカが,本当に辺野古移設を進めるのなら,強制執行を発動しそれに対して起こるであろう反対運動を受けて立つ覚悟がなければならない.歴代自民党政権も今の民主党政権もそんな根性はまったくない.日米合意と言うが,できないとわかっていることを合意すれば,それは落とせないことがわかっている手形を振り出すようなもので,ほとんど手形詐欺である.
民主党党首選挙の討論で小沢候補が言っているように,辺野古移設は不可能だということをおさえて,そのうえで海兵隊の全面移転をアメリカと交渉する以外にない.しかしその交渉は小沢政権になったとしても,困難で時間もかかるだろう.菅政権が続けば,完全に行き詰まり,かえって日米の不信が厳しくなる.
アメリカのアフガン政策はまったく失敗している.先日アフガンで解放されたジャーナリストの常岡さんがいっているように,誘拐犯はタリバンではない.彼の現地報告は,軍閥の腐敗でありアメリカのアフガン政策の破綻そのものである.それがはっきりしてくるや,日本のマスコミは常岡さんの報道をピタッと止めてしまった.アメリカの意向である.普天間移設の問題は,このアメリカと交渉しなければならないのだ.
そのアメリカであるが,ファシズムに向かっているように見える.経済的にも追い詰められた草の根のところで,かつてのアメリカの栄光が忘れられない層がファシズムの土台である.茶会運動がそれである.その中からコーランを燃やそうという愚かな動きも出てくる.日本や欧州はファシズムを経験した.アメリカはまだない.マッカーシズムはその端緒であったが,あの当時のアメリカは上り調子であり,ファシズムとして広がることはなかった.今はちがう.もちろん良心ある人も多く,日本軍国主義のように大政翼賛一色になるのではなく,アメリカを二分することになるのではないか.この米国ファシズムとの対決は,人類が避けて通れない道であるようにも思われる.
等々.いろいろ考えることは多いのだがいささかとりとめなくなった.朝夕はようやく涼しさを感じることができるようになったが,日中はまだまだ暑い.