粛粛?

一気に秋である.秋とともにいろんな問題が表に出てきた.
この数日,中国漁船の船長逮捕の問題で「粛々」という言葉が政府の方からよく聞こえてくる.この場合は「粛粛」と書くのが正式なのだが新聞はもっぱら「粛々」である.これはどのような意味か.政府は一体どのように意味で使っているのだろう.
辞書(1988.国語大辞典(新装版)小学館)では

  1. つつしみうやまうさま。うやうやしくする様子。
  2. 静かでひっそりしたさま。ものさびしいさま。寂々(せきせき)。蕭々(しょうしょう)。頼山陽詩鈔ー題不識庵撃機山図「鞭声粛粛夜過レ河」
  3. ひきしまって厳粛なさま。ととのったさま。おごそかなさま。厳粛なさま。

と書かれている.2の例にあるように,川中島の決戦で上杉謙信が夜に紛れて川を渡った様が頼山陽漢詩のなかでは「粛粛」をもちいて「鞭の声をさせずに」という意味で使われているのが有名だ.政府が「相手に気づかれないように」という意味で用いているということはないだろうから,この意味ではなかろう.残る「厳粛」の意味なら法の適用という意味で当たり前のことである.あえていわねばならないと言うことは,日頃は,先日のFD書きかえではないが,厳粛にはやっていないがこの件ではやったということか.
いずれにしてもまったく無意味な形容動詞である.こういう無意味な言葉を用いて本音をごまかすことがこれまでの自民党政府の方法だった.民主党も,おそらくは官僚の入れ智慧でそこに戻った.いずれにしても日本を間にはさんだ米中の力比べである.その中で双方を手玉にとるような政治力は現政権には望むべくもない.
アメリカははるかにしたたかで,日本と中国を対立させ日本企業を中国から追い出し,その後をアメリカ企業が入り込もうという戦略をもっている.前原も岡田もそして内閣全体がその方向で踊らされている.
それにしても,首相も官房長官もは「検察の独自の判断」ということをしきりにいう.が,これは検察が政治判断をすることを認めたことになる.今回の船長釈放はまさに検察による「国策捜査」そのものであったことになる.鈴木宗男氏の有罪確定も,一連の小沢関連の捜査も,国策捜査ではないかという主張に,政府や検察は反論できなくなる.国策捜査の中で菅政権が生まれたのだ.政権の正統性も失われるということになる.政権の正統性については天木さんも言っているが,今後このような声は燎原の火のように広がるだろう.