3次元ヘロンの公式

 『数学対話』「デカルトの円定理と一般化」に「3次元のヘロンの公式」を追加した.
アレクサンドル・グロタンディーク(Alexander Grothendieck)という数学者がいる.あるいはいた.昔東北大学にも来ていたことがある.数学者となってからのもろもろは,例えば上記を見てほしい.2002年7月号の『数学セミナー』で山下純一さんが「グロタンディーク計画」という連載の4回目『数学との出会い』で書いていた.1942年頃,南西フランスの片田舎にナチスの迫害を逃れたユダヤ人をキリスト教徒がかくまう村があった.グロタンディークもかくまわれていた一人で,そこに彼らのための学校もあった.

 16歳のころにグロタンディークは,おそらく古色蒼然とした幾何学の授業で「ヘロンの公式」を習った.そして,自然に興味を広げて,四面体の6辺の長さから体積を求める「3次元のヘロンの公式」を導き出すことの成功したようだ.少ない知識で根気よく計算に励んだにちがいない.
 …
 疑問があると,すぐに参考書や文献を調べるのではなく,どんなことでもまず自分の言葉に直してわかるまで考えぬくという「研究スタイル」もこのころすでに芽生えていた.

 最近これを読んだので,これまで書いてきた『数学対話』の中の方法で,3次元のヘロンの公式が作れることを思い起こし,やっておいた.行列式の計算を使うので高校数学範囲といえるかどうかはわからないが,できる.4次元のヘロンの公式もできる.偶数次元はもう少しまとまった形になるかも知れないがやっていない.上記山下さんには「4次元のヘロンの公式」(『理系への数学』1999年1月号)もあるようなので関心ある人は取り寄せてみてほしい.「デカルトの円定理と一般化」では実質的にn次元のヘロンの公式が行列式の形でできている.
 グロタンディークについては,かれの 「EGA」『代数幾何原論』を海賊版で手に入れ挑戦したことなど,懐かしい思い出もあるがそれはもう昔のことである.