『パスカルの定理と幾何学の精神』

nankai2010-10-14

ようやく『パスカルの定理と幾何学の精神』の本体を書きはじめた.予定よりも少し遅れ気味である.仕事の方で代講や個別指導が増えたことなどもあるが,射影幾何はやはり奥の深い世界でいろいろ図を準備したり,途中でクラインを読んだりと時間がかかった.考えれば今年初めに『デザルグの定理』を作っていたのだから,年中射影幾何を勉強していたことになる.
射影幾何は完成している分野であり,その後の幾何の発展にのみこまれて,最近では改めて書物になることも少ない.しかしここには考え方においても事実においても実に豊かなものがあり,高校から大学初年の数学のなかでもっと取り入れられ伝えられるべきであると思う.
秋も少しは深まってきた.こちらも少しずつ書きためていこう.ときどきPDFファイルの方を更新したい.写真はフヨウの花.
追記:実際に公理系を書き下し,そこから論証を構成していくと,いろんなことが見えてくる.2直線はつねに交点をもつ.射影平面のなかだけで組み立てようとするとこれを公理に入れなければならない.しかしより大きい次元のなかではこれを結果として導けるより緩い公理系でよい.1次元射影空間,つまり直線と,2次元射影空間,平面とはその中だけで組み立てようとすると,公理を追加しなければならない.空間,3次元のなかにおいておけば公理系は簡明になる.デザルグの定理がその典型だ.人間の住む世界が3次元であることは,それなりに理由のあることなのだろう.3以上の射影空間で簡明な公理系を立てることが,理にかなっている.これらのことは十九世紀末にはほぼわかっている.それでもいちどは最初から構成してみるものなのだろう.