ζ(2)の計算

 昨日の京都の授業で,90年の東工大の問題を勉強した.先週聞いたところ,受講生の中で『天書の証明』の英語版を読んでいる人と,『数学ガール』を読んでいる人がいて,公式

\zeta(2)=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots=\prod_{p}\frac{1}{1-\frac{1}{p^2}}=\frac{\pi^2}{6}

を知っている人があわせて2人いた.それで,この東工大の問題にあわせて,上記公式の証明も一緒に考えておいた.この入試問題自体が難しいものだったが,それを用いれば,ζ(2)の値が求まることはつかめたと思う.受験勉強の中でこういう経験をもつことは悪いことではない.
 昨年の今頃はこれを一般化することを考えていた.その結果が『ζ(2l)を関・ベルヌーイ数で表す』だ.この証明もよく知られていることだろうが,一から自分で作ってみるのはたいへんおもしろかった.それから年明けて『デザルグの定理』などへいったので,この一年は結構いろいろ勉強したことになる.ζ(2l)を考えていたのがずいぶん昔のような気がする.
 高校数学の周辺を掘りさげることを,倦まずたゆまずやって残しておく.誰かの役には立つだろう.これは頭の働くかぎり続ける.そういう人間として,情況に対し発言し,可能な行動はする.発言すること自体が困難な国や地域が多くある.戦前の日本にもこの自由はなかった.今日の日本では少なくとも建前として思想信条の発言は自由である.それは多くの先人の困難な闘いがあってのことなのだ.それだけに,思想信条の自由を事実でもって行っていくことは,われわれの務めであると思う.