新年を迎える

明けましておめでとう 今年もよろしくお願いします
去年,私の中にある昔の正月の思い出を書いた.『正月の記憶』である.思い出はこれだけでよい.これからのことを考えよう.今日,夜の8時から10までテレビを見た.これだけ長時間見たのは久しぶりだ.歴史学者 J・ダワーが語る “アメリカ テロとの戦い”である.J・ダワーさんは本からしか知らなかった.こんなに老いてなお元気な人だったのだ.彼に森達也さんがいろいろ聞く.それをいろんなアメリカの現実の取材と組みあわせて2時間にまとめ,なかなか見応えがあった.
J・ダワーさんはやはりアメリカの良心ともいうべき意見である.9・11のあとのイラク侵攻は狂気の沙汰であり,まったくの誤りだった.番組はこのダワーさんの言葉からはじまって,自由と移民の国であったはずのアメリカが,なぜこのようにイスラム排外主義の国になっていったのか,それをたどる.番組の一番最後にニューヨークの高校での森さんとの討論で,あるイスラムの美しい緋色のスカーフをつけた女子高生が「アメリカは泥沼にはまってしまった.これからのアメリカがどんどん悪くなり,どんなことに出会うのかと考えると悲しくなる」と確信をもって語ったのが印象的だった.イスラムとの和解を呼びかけるいろんないる人がいることは伝わっていた.現在のアメリカの動向をファシズムだと内部からいう人もいた.アメリカは多様であり,イスラムを理解し共生の道を模索する人々の存在もよくわかった.しかし,今後経済がますます悪化する中で,やはりアメリカはものすごくたいへんなことになるのではないかと思う.高校生や多くの移民がそれを肌で感じている.超大国ファシズムに向かうというこのアメリカ問題は人類が直面する最大の問題ではないかと思った.番組の紹介をすることは難しいし,見たばかりのメモにすぎないが,いろいろわかった.
ひるがえってNHKである.この番組の中では,9・11以降いかにアメリカのメディアがナショナリズムに染まり,戦争を正当化するうえで大きな役割を果たしたのかが,いわれていた.ならNHKもまず自らを省みるべきである.番組の間のニュースではあいかわらず菅訪米に向けた前原外相の言葉を報じていたし,日米同盟の深化という言葉についても何の疑問もないかのように報じていた.NHKは一方で今日のような放送を流しながら,全体としては現在の菅政権に無批判であり,旧体制とアメリカ産軍複合体の宣伝機関,国民洗脳組織になっている.この先,最悪のパターンは来年のアメリカ大統領選挙でペイリンのような,それこそブッシュの戦争を肯定し拝外主義をあおる人間が茶会運動など下からのファシズムに支えられて当選し大統領になる.日本ではアメリカ支配層の覚えめでたい前原が首相になる.そして日米同盟の深化を確認する.何のことはない.ファシズム同盟である.このコースを最悪とし,そこからどれだけ異なる道を行くことになるかは,今年に決まるようにも思われる.
若い人には,これは本当かと,どんなに権威をまとった報道にも惑わされず,自分で調べることをすすめる.また,同じ人間ではないかというところから,異なる文化のもとに生きる人々を理解する.排外主義に陥らない.経済は手段にすぎない,大切なことは物質的繁栄にはない,理念をもって生きてこそ経済問題にも道が開ける.等々,若い人とともに考えたいと思う.