平成の開国? 平成の売国!

菅首相の施政方針演説で,「平成の開国」が言われた.いまさら何を開国するのか.要するにTPP(環太平洋連携協定)に参加しよう,ということである.それを官僚が美辞麗句で「平成の開国」と誰も反対できないような表現にくるんだのである.その意味を金子勝慶応大教授が「天下の逆襲」で書いている.それが「なぜ大マスコミはTPPの問題点を報じないのか」として紹介されている.それによれば,日本の関税税率はすでに十分低い.EUは域内の農業保護政策で農産物関税が20%を越える.日本の農産物関税の平均は12%.TPPは例外なしの関税ゼロを原則とする.これで日本の農業はさらに崩壊する.農業は文化の土台である.農業は経済性を越えても守らなければならない.
100年前,小村寿太郎が,関税自主権を回復するために日英通商航海条約を改正するなど,外国との不平等条約の完全撤廃をおこなった.国民新党の亀井代表が記者会見で,「国家の基本は防衛と関税自主権だ」と言うのはその歴史をふまえる当然の見解なのである.またNHKニュースの方ではTPPについて「のぼせるなと言いたい。よその国を喜ばせる前に国民を喜ばせることが大事だ。『開国すべきものはしている』という立場をとらなければ、経済の外交交渉はできず、ピントがずれている」といっている.その通りである.TPPは「例外なき関税自由化」を掲げている.その内実はアメリカのために再び関税自主権を放棄するものである.それが「平成の開国」の中味である.
アメリカはこの先,日本の金融資産を奪い取り,公共事業などをアメリカ企業が請け負おえるようにし,アメリカ国債をさらに日本に押しつけ,などなど「広範なパートナーシップ」の美辞のもと対日要求24項目すべてにわたって交渉し日本経済を完全に取り込もうとする.没落しつつある現代のローマ帝国には,もはや日本を道連れにする以外に道はない.TPPについては日々不穏日記さんの意見も参考になる.
「平成の開国」のような空虚な美辞麗句に惑わされてはならない.その内容は「平成の売国」に他ならないのだ.ちなみに『週間金曜日』の1.21号は「前原外相の平成の壊国」である.これも本質を突いている.菅前原政権がいかにアメリカの介入で作られたものであるかは,1月20日東京新聞朝刊が報じた.関西では読めないがここに紹介されている.
かつて1960年〜80年代,アメリカは南アメリカ大陸諸国に政治的に介入し,現地に軍事的新自由主義政権をつくりこれを操り,南米からの収奪を強めた.その地の人々にとってこの時代は長く困難な時だった.しかしこの苦難の時をへて民衆は蜂起し,それを土台にこの10年,南アメリカには新しい世のあり方を模索するうねりが続いている.アメリカはかつてのようにこの地で莫大な利潤を上げることはできない.今アメリカが自由にやれそうなのは,日本くらいなものである.TPPは,かつてアメリカが南米でやったことを日本を巻き込んでやろうとするものである.
チュニジアの革命がエジプトなどに飛び火している.エジプト内務省デモ参加者を少なく発表している.しかしVoice of America のニュース写真などを見ると政府発表よりもはるかに大規模な反政府運動になっている.チュニジア,エジプトと腐敗した親米政権が倒れ,それが中東全体に広がりそうである.エジプトで実際に力をもっているのはイスラム同胞団である.レバノンでも,反米反イスラエル・親イラン親シリアのヒズボラが主導する政権ができた.親米のハリリは,議会での投票で敗れ首相を退き,代わりにヒズボラが推すミカティが首相になった.巨大な地殻変動がこの地で起きはじめている.アルゼンチンでの民衆蜂起は2001年12月だった.今回の中東の動きは,10年前の南米での地殻変動に続くものだ.
一昨年の日本で民主党政権を生みだしたのも,腐敗した親米自民党政権への怒りであった.その後,アメリカやそれにつながる官僚・検察・報道機関がおしかえし,再び親米隷属売国菅内閣になっている.しかし時代の趨勢は明確である.道は曲がりくねっているが,必ず到達すべきところに到達する.しかし彼らがみずから退くこともまた,ない.