アメリカの良心

メア日本担当部長が解任された.これを日本政府は「歓迎」し一件落着にしようとしている.しかし解任ですむ話しではない.発言の背後にあるものを追究しなければならない.この解任が,日本とアメリカの官僚が事態をおさめるために裏で動いて画を描いた結果であることも見え見えである.メア発言は実はアメリカ政府,そして歴代自民党政府の本音そのものである.
今回この発言が明らかになった経過はここに詳しい.沖縄タイムス「講義記録は正確」アメリカン大教員、学生が再証言.学生たちは去年,メア氏の講義を受けたとき,差別的な発言だと感じた.それから年末年始に沖縄を研修訪問.メア氏から聞いたこと実際との違いを改めて確認.その結果,メア発言を放置することはできないと考え,それぞれの講義ノートを集約し,点検してまとめたのだ.その様子は現地の新聞を伝えるブログを読めばよくわかる.それを共同通信の記者が知り,講義に参加した学生と教官全員に確認していった上で発表したのだ.
アメリカン大学はワシントンにある私立大学.大学側から,国務省の見解も聞いておきたいとして要請し,国務省内の会議室で行われた講義である.これを公表するには勇気がいっただろう.しかし彼らはそれを実行した.沖縄現地を訪れ自分の足と目で確かめたことが後押ししたのだ.彼らの勇気と行動力は立派である.日本の大学生が同じ立場になったとき,これができるだろうか.今回の学生の行動はアメリカの良心であり,希望だと思う.
もうひとつアメリカの良心を見るのは,ウィスコンシン州の労働者の闘いだ.現在,アメリカの中西部の共和党知事の諸州で大争議が勃発している.2010年11月の中間選挙で茶会運動の支援を受けて州知事となった共和党右派の知事(中西部のウィスコンシンオハイオインディアナ州など)は,財政赤字を口実にして州や郡,市などの自治体公務員,公立学校の教職員など公共部門の労働者たちの団体交渉権を剥奪しようとしている.これに対して組合と支援者たちが,数万人の抗議デモを繰り広げ,州議会議事堂を占拠して闘いを続けている.2月26日にはウィスコンシン州都・マジソンで10万人集会が行われた.ここにその動画もある.それは今も続いている.
為政者はいつも経済を理由に労働者の基本的権利を奪おうとする.かつての国鉄民営化もそうだった.あの狙いは日本の労働運動の中心であった国鉄労働組合(国労)の解体であった.それらに比べて小さなことではあるが,私も地元の市立高校の組合の委員長時代に組合活動に関わることで停職一ヶ月となったことがある.それは中曽根行革の時代で,高校を廃校にするための組合攻撃だった.数年の取り組みと多くの人の協力を得て処分そのものは裁判で撤回させたが,学校はもうない.それだけにウィスコンシン州の教員や公務員労働者の闘いは人ごととは思われない.
客観的に帝国アメリカは凋落してゆくな.そのなかで,この闘いは本当に困難なものになるだろう.同時にそのなかからいろいろと新しい生き方や,アメリカンドリームに代わる新しい思想が生まれるだろう.茶会運動そのものは現代のファシズムを指向している.しかしそのもとでこれだけの人々の闘いがある.新生の事物は,このような闘いのなかからかならず芽を出す.