合格発表の時節

 一通り合格発表があった.去年わずかの点数で不合格だったYさんが,今年京大理学部に合格した.これで20人足らずだった去年の京都教室の選抜クラスから,現役で合格していたK君,K君,M君とあわせて4人が京大理学部に進みそのうち3人が数学志望だ.少なくともこちらの授業で数学がいやになったということはないわけだ.数学研究で仕事をするのは本当にたいへんだ.彼らは教員免許も取るといっている.その準備をしながら,できるところまで思いきり挑戦してほしい.
 この3人のなかから数学で何かする人が出るもよし,あるいは数学教育に携わるもよし.将来教員になればこちらの言っていたことを思い起こすこともあるだろう.黒板の前で喋っているときに思い出してくれればなお良い.青空学園の文書を読んで,何かヒントを得たり懐かしく思うこともあるだろう.それでよろしい.私も高校のときの数学の授業でのO先生やS先生,Y先生のいくつかの言葉を今もはっきり覚えている.こうして何かが継承されてゆく.それが人間の文化ということだ.こちらとしては,頭の働くうちに,もう少し書き置くべきものを作らなければならない.きりはないのだが,それでも計画的に系統的に少しずつ.
 朝日新聞がとうとう菅政権を見限った.「菅首相に違法献金の疑い」.ということはアメリカが見限ったということだ.中東の激動など,世界が再編成されてゆくなかで,アメリカはこれまでの権益を守るために必死だ.ところが日本の政権は余りにも無能である.何の役にも立たない.傀儡政権もそれなりに有能でなければ使い捨てられる.
 こうなるとメア発言も,沖縄からアメリカが出て行くためにあえて本音を出したのではないかと勘ぐることもできる.客観的にはそういうように働くだろう.アメリカはもともと基地をグアムに統合し,東アジアの基地は縮小する方向だ.とくに近年はアメリカ経済が厳しいなかで,アフガン,パキスタンで手一杯なのだ.それを引き留めていたのが歴代自民党政権であり日本の外務官僚だった.「思いやり予算をつけるから基地を置いておいてくれ」.辺野古移設も嘉手納の騒音対策は名目で,実際は日本の金で超近代的なハイテク基地を作りそれを提供して米軍を沖縄に引き留めようとするものだ.その見通しが立たないならグアム基地の建設に日本の金を出させる方がアメリカはいいのだ.おそらくそういう方向が出てくるだろう.
 朝日新聞は,戦前は軍国主義をあおり,敗戦後はうってかわって昔から民主的だったという顔を平気でしてきた新聞だ.今回も小沢たたきと菅政権の太鼓もちで一貫してきた.それならそれで筋を通してアメリカから何を言われようと菅を支えれば良い.ところがそうしない.彼らは自分で考えていない.つねに日和見だ.その体質に抗議して朝日を辞めたのがむのたけじさんだ.
 大手マスコミはアメリカの意向をそのまま記事にする.戦後の占領期にアメリカが日本に作ったマスコミ統制の機構は今も動いている.しかし,今日は情報基盤が昔とは異なって一人一人の手にある.もちろん中国のようにこれを国家が管理し,それでも書けば軟禁されるところもある.日本でもいつまでもこんなことが書けるのかどうかはわからない.しかし多くの先人のそれこそ命がけの闘いの上に,少なくとも日本ではまだ発言できる.思想信条政治活動の自由は使わなければ風化する.若い人がもっと声をあげることを願っている.