高速鉄道の事故

23日夜に中国浙江省温州市内で高速鉄道車両の追突事故が起きた.そして現場では24日,重機で土を掘り先頭の運転車両を埋めてしまった.中国のネット上では「事故原因を隠すためのではないか」との声が広まった.上海鉄道局の関係者は「事故原因の究明には役立たない.もはやくず鉄だ」などと話している.しかしくず鉄だからその場で埋めるのか.これは真相隠しといわれてもしかたがない.
この姿に,事故から2ヶ月以上経ってようやくメルトダウンを認めた東電の姿が重なる.彼らは同じ体質だ.中国の高速鉄道事故と日本の原発事故は同じ年に起こった.そして同じような意味をもつことになる.日本も中国も200年前,西洋帝国主義の圧力を受け,これにいかに対するのかという問題に直面した.
日本は明治維新によって資本主義の時代に入り,結局は西洋帝国主義の真似をしてアジアへの侵略と植民地政策を進めた.それは65年前の敗戦に至る.しかしその後日本はアメリカに従属しながら原子力発電政策を推し進める.西洋社会ほどには足が地につかないままに西洋の真似をして原発を作り続け,そのあげくが福島原発事故であった.後始末に100年はかかる大事故である.
中国は大きい国である.小回りは聞かない.アヘン戦争を経て半植民地状態に置かれ,日本の侵略も受けた.遂には毛沢東のもとで自力自己解放をかちとり,中国独自の社会主義の道を歩みはじめる.しかしそれを途中で放棄し,結局は資本主義の道へと舵を切った.そして世界経済に大きな影響を与えるまでに国力をつけたが,その西洋化が,足が地につかないものであることは日本と変わりなかった.そのあげくの高速鉄道事故であった.システムの問題であり,このままでは今後も事故は多発するだろう.
現代文明そのものは不可避である.しかしそのもとでどのように人間が生きてゆくのかは未解決である.経済を第一にした現在の国際・国内の諸システムでは,原子力は制御できないし,中国のように資本主義をやりながら圧政を続けるところでは近代技術そのものが危険になる.日本も中国もそれぞれの道を経て今日に至り,そして大きな問題に出会っている.問題を問題としてとらえることが,活路をきり拓く第一歩なのだが,その声は未だあまりに小さい.