射影幾何(続)

 この数日,問題作成と授業以外は射影幾何に没頭していた.いつのまにか朝夕,風に冷気を感じるようになった.
 ようやくポンスレの定理を古典的な射影幾何で証明する糸口を理解した.n=3,n=4のときは,必要なすべての命題を証明したうえで,これを証明した.なんとかここまでは来たという気持ちである.ポンスレの定理の古典的な証明で一般の場合は文献にもないようなので,自分で考えなければならない.代数的な証明は『ポンスレの定理』に出来ている.これを整理し簡潔にすればよい.そしていよいよ代数幾何的な証明である.今秋,なんとか全体をつかみ,来年の3月頃までには『パスカルの定理と幾何学の精神』をまとめ,それから何度も読みかえして再度整理していきたい.それからガロア理論大数の法則など確率の基礎,ここまではやる.
 このような勉強は,「教育数学」の基礎作りと考えている.教育に携わるものが,その基礎として学んでおきたいことが教育数学である.古典的な結果を高校数学と繋いで書き置けば,いずれまたそれを引き継いで深める人もいるだろう.そのように考えている.
 高校数学とその周辺,それは数学にとどまらないのだが,それを掘り下げる.これは自分の高校時代には身についていた数学と言葉への率直な感覚にしたがって,それをそのまま書き出しているようなものなのだ.この40年,考えてみれば大学ではほとんど勉強せず,高校生のときの感性をそのままに自分で勉強を深めてきたようなものだ.それが出来てきたことには感謝している.書き置くことが出来るのもありがたい.
 来週の土曜は昔の教え子の同窓会によばれた.あのクラスの彼らとは,5,6年前に20年ぶりに会って,それから今回だ.今日電話してきてくれたY君は,なんであの高校がなくなったのか,自分とってはあの3年間が本当に楽しかった,といってくれた.私の働いていた高校は,まさに中曽根行革にはじまる行革の時代に,後に廃校につながる方向が市によって打ち出され,いろんな人が反対したが,結局廃校になった.中曽根は日本に原発を引き入れた一人.個性ある市立高校を廃校にし,日本の地方を荒廃させ,原発はそれと引き替えに僻地にカネをばらまいて建て増しされていった.すべては大きな歴史のなかの同じ渦である.そしてそれがもういちど問い直されるべき時代をいま生きている.