射影幾何(続)

10/1に書いた次の命題の証明が出来た.曲線束とは,4点を共有する円錐曲線の集合である.複素数の範囲では,二つの円錐曲線は重複を含めてつねに4個の共有点をもつ.

円錐曲線 Q_0 に内接する四辺形 abcd の辺 ab,cd と円錐曲線 Q_1 が接するとき,Q_0,Q_1 で定まる曲線束に属する円錐曲線 Q_2 で辺 ad,bc と接するものが存在する.■

これまで書いてきたものを読みかえしてできた.1ヶ月も図を描いて考えているうちに,だんだんと19世紀の射影幾何になじんできたということなのだ.これは数学セミナー(1986.7)に載っているポンスレ自身の証明とも違うようだ.おそらくその後,シュタイナーなどが再構成したなかにあるだろう.19世紀に盛んであった射影幾何の「総合的証明」という方法である.退化した場合など検証すべきところもあり,これを書いていろいろ検証しよう.ポンスレの定理そのものはすぐできる.とりあえず左図を入れてPDFは更新した.この図のように色刷りで図形がかける.Win Tpicのおかげである.証明の前に,これできっちり図を描いて,共点かどうか,共線かどうかを確かめることも多い.作者に感謝.
さらにこれを射影空間の座標幾何で証明したい.1917年の古本『A Treatise on CONIC SECTIONS』( George Salmon 1917 Longmans Green)がネットで探して手に入った.『サーモン円錐曲線解析幾何学』(小倉金之助訳)も注文した.
ポンスレの定理は,19世紀に大いに研究された.美しくまた奥深い定理だ.20世紀初頭にはほぼ済んだことと見なされていたのだが,1970年代にグリフィスによる新しい証明がでて,楕円曲線の応用としての再構成がなされた.いろいろな論文がネットで手に入る.この方面をまとめた日本語の教科書『代数幾何学』(硲文夫著)を読んでいるところだ.私としては,教育数学の素材を集め証明をつけるということがやっていることの意味なので,深入りするよりは広く実例を残してゆく方に時間を使うべきなのかも知れない.いずれにしても,もっと頭が柔軟な若いときに,時間を見つけてもう少し勉強しておくべきであったとつくづく思う.今数学教育の分野にいる若い人,大いに勉強しよう.