黄金時代の二つの定理

 帰宅すると手配していた古書が来ていた.『数理と現象』 (高橋 秀俊著,1975,岩波書店)と『数学点描』(シェーンベルグ,I.J.著,三村護訳,1989,近代科学社)である.それぞれの中の章「楕円関数の加法定理−裏から見た数学−」と「ポンスレとスタイナーの2つの定理」を読むためである.千葉市と帯広の近くの音更町というところの本屋さんからの取り寄せである.
 スタイナーの定理というのは『反転と円環問題』の「円環の諸定理」の定理6である.ひとつ存在すれば無数に存在する,というのはポンスレの定理と似ている.しかし,シュタイナーの定理は反転によって同心円にうつして証明できる.反転は円−円変換だが射影変換ではない.シュタイナーの定理は射影幾何の定理ではない.一方,ポンスレの定理は射影幾何の定理である.射影変換で二円を同心円にうつすことはできない.このことまで書いている.シェーンベルグはこの章のはじめに「射影幾何学や非ユークリッド幾何学が発展した幾何学の黄金時代の二つの定理」と位置づけている.そして,ここからはじめて,ポンスレの定理のベルトラン−ヤコビによるポンスレの定理の証明を紹介している.「ポンスレとスタイナーの2つの定理」は二つとも『数学対話』で高校生にわかるように述べてきた.これらはもうすでに過去のできあがった定理として,今出版される新しい本などで触れられることは少ない.しかし,教育数学としては今いっそう重要で,もっと知られてほしい定理である.
 これらの古本は,すべてネット上の検索で見つけた.資源の有効活用という点からもたいへんいいことだし,便利だ.古本がこのようにして再流通する時代になっている.私もそろそろ蔵書を整理していこうと考えている.自分の本棚で眠らせておくよりも,古本屋に引き取ってもらい,その本屋が整理して検索できるようにしてくれれば誰かの役に立とうかというものである.ということで2,3日はこれを読んで再構成である.
 写真は,はっとする美しさの毛虫.何の幼虫だろうか.
 追伸:さっそくメールをいただいた.紹介させてもらいます.……………………………
 いっちゃん@岐阜県関市です。
 学園だよりにあった派手なケムシは、リンゴドクガ Calliteara pseudabietis です。ドクガという和名があっても、毒はありません。京都市保健福祉局の資料が検索でヒットしたので、参考までに添付します。派手な色彩なので、Webで結構ヒットします。成虫はあまりきれいではありません。
 以上、取り急ぎお知らせします。
…………………………………ありがとうございます.