何が冷温停止か

政府は16日,原発事故の収束を宣言 ステップ2終了を確認を発表した.朝日新聞は「野田政権は16日の原子力災害対策本部で、東京電力福島第一原発の事故収束に向けた工程表ステップ2(冷温停止状態の達成)の終了を確認した。野田佳彦首相は記者会見で『発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される』と事故収束を宣言した」と伝える.新聞はこれを大々的に伝えるだろう.しかし事実は,事故の全体像さえつかめていない.もと東電社員の蓮池透さんもいっているように「冷温停止」とは正常に稼働している原発に関する概念である.福島の原発はいわば底が抜けた鍋の状態で,鍋の底から落ちた核燃料の状態すら把握できていない.いまも臨界になることがあるかも知れない.底が抜けた鍋が100度を超えないからといって,それに何の意味があるのだろう.さらに原発事故の収束を宣言である.99%の人間はあきれている.
政府はさらに昨日,年間20ミリシーベルト「発がんリスク低い」との見解を発表している.冗談ではない.隣の人に年間20ミリシーベルト放射線を浴びせればこれは犯罪である.ところが政府は東電のこの犯罪を許すのである.東電が引き起こした核惨事は人災でもない.れっきとした犯罪である.にもかかわらず検察は,無実の者に冤罪をかぶせることはあっても,東電を強制捜査することはない.国家がこの犯罪を免責するのである.東電,大手新聞,司法組織,そして政府官僚,これらが1%のために動いている.
しかし,たとえ政府がどのように言おうと,数年のうちに子供のガン多発をはじめとする悲惨な核災害が現実のものになる.そのときこの政府見解に裏を与えた御用学者には責任をとってもらわなければならない.それよりもさらに考えるべきことがある.数年経って,福島を離れたいと思いながらも事情があって離れられなかった親の身内にそのような問題が起こったとき,親は自分を責めるだろう.そのつらい心情を思う.親に責任はない.責任は東電と政府にある.しかし親は自分を責める.このような苦しみが数年のうちに現実化することははっきりしている.しかしそれでも政府や御用学者,裁判所は因果関係は証明されないと逃げるだろう.こんな国家と政府があってよいのか.
核惨事はこれからますます現実のものとなってゆく.福島原発自体,近づくこともできないほど高濃度に汚染された区域が多くある.収束どころではない.核惨事は,原発災害が引きおこした惨事であるとともに,それ以上に,このような政治によって引き起こされる人間的な苦しみの惨事である.核惨事を起こした東電とそれを許した日本政府,彼らは1%の側のものであり,その政府である.この非人間性,これが現在の日本の現実である.このような悲惨で非人間的な政治は終わらせなければならない.瀬戸内晴海さんが言っておられた.「若者の特権は恋と革命だ.こんな日本を変えるために大いにおやりなさい」.そういう時代になった.今年はこうしてくれてゆく.辛卯の年の,厳しくも現実があらわとなった2011年もそろそろ年末である.