沖縄・米軍基地観光ガイド

 すごい本を読んだ.『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド』である.<2011年 6月15日 第1版第1刷 発行・2011年11月25日 第1版第3刷 発行,発行所 書籍情報社/文・発行 矢部宏治/写真 須田慎太郎/監修 前泊博盛>とあるから版を重ねているようだが,もっぱら沖縄で売れている.本当はわれわれこそが読むべき本だ.著者は書籍情報社の代表であり,書籍情報社のサイトに多くの書評が紹介されている.読書ノートを作ってからここに書こうと思ったが,それよりも一人でも多くの人に早く勧めたいとこれを書いた.この一文を読んだ人は,自分で手に入れて読んでほしい.丸善ジュンク堂通販ギフトサイト e-select!などが便利である.ウエブ購入の一覧は書籍情報社のサイトにある.
 写真と観光ガイドと文書が一体である.みごとな写真とその間にはさまれた文章は,ほんとうに読ませる.戦後日本の政治構造を,沖縄・米軍基地をめぐりながら,基本資料にまであたって書ききっている.このような本が世に出る時代になった.若い人が,自分の未来の問題として読んでほしい.先入観をもたないで読んでほしいので,内容はここでは書かない.目次のみ紹介しておきたい.
 ペリーはなぜ、最初那覇に来たのか/沖縄には6人の帝王がいた/占領はまだ続いている/鳩山首相はなぜやめたのか/続・鳩山首相はなぜやめたのか/天皇に切り捨てられた島/日本国憲法日米安保条約アメリカの対日政策/CIA と戦後日本/日本テレビとCIA/戦後体制の守護神・司馬遼太郎/60年安保とは、なんだったのか/沖縄返還とは、なんだったのか/細川首相はなぜやめたのか/少女暴行事件/沖縄の海兵隊はグアムへ行く/日米合同委員会とはなにか/いま、日本に何が起きているのか/アメリカの2つの顔…民主国家と基地帝国/世界の希望はどこにあるのか/フィリピンにできたことは、日本にも必ずできる/「常時駐留なき日米安保」と「アジア共同体」/そして輝ける未来へ/資料/あとがき/監修の言葉
 今後半世紀の時間で言えば,帝国としてのアメリカは凋落し,それに従属する戦後日本の政治構造もまた解体する.今まさにそのような時代に入りつつあることを,この本の出版自体が教えている.もっとも本書はそんなアメリカに対する見通しには触れず,日本の問題として冷静に客観的に事実を積み重ねる.そこから見えてくることがあるはずだ.同時にどのような未来を作るのかは,すべて開かれた問題であることもまたわかる.さらにいえば,帝国もまた必死である.凋落を自ら受け入れることはない.困難な時代を経なければならない.ともあれまず本書の一読を乞う.そして一緒に考えたい.