民間(?)事故調査報告書

 昨日から,テレビや新聞は「民間事故調査報告書」なるものでもちきりである.報道される内容は,菅直人前首相と斑目春樹原子力安全委員会委員長への批判と攻撃一辺倒である.この調査報告は「福島原発事故調査独立検証委員会」によるらしい.これは何かと調べると,船橋洋一元朝日新聞主筆が理事長である一般財団法人「日本再編イニシアティブ」という団体が作ったことがわかる.飯大蔵の言いたい事にも詳しい.この報告書には次の下りがあるそうだ.2月28日産経の記事を紹介する.

自衛隊と米軍は震災直後から『日米調整所』を防衛省内などに設け救援や事故対応で連携。外務省や東電を交えた日米当局者の会議は防衛省内で開催された。22日に官邸主導の日米会合が立ち上がるまでの間、『日米間の調整を担ったのは自衛隊と米軍の同盟機能だった』。報告書は日米同盟の今後の課題として『今回の事故と似通った事態が想定される核テロ攻撃時の運用態勢』構築の必要性を挙げている…日米防衛当局こそが『最後のとりで』だ。

 つまりこの「民間事故調査報告書」なるものは,アメリカや日本の旧体制の提灯持ち知識人がつくったものであることがわかる.民間を装いながら,その実,旧体制に組み込まれた委員会である.それではではなぜ今これが出てきたのか.直接の原因は,斑目委員長が最近「第2次のストレステストまでしないと再稼働できない」ということを言いはじめたからである.斑目氏もこのままでは数百年後の歴史の教科書に「当時『マダラメハデタラメ』という戯れ言がはやった」と書かれてしまいそうで,3月末で安全委員会がなくなる前に意地を見せたのだ.電力側にすればこれでは再稼働できない.そこで日本の旧体制が急いで出してきた.より大きくは,日本の旧体制側が,東電核惨事をてこに,アメリカへの従属,新自由主義の再編強化を狙っていることである.まさに「災害資本主義」である.マスコミ,官僚,大企業はこれをてこに宣伝攻勢に移るだろう.
 東電核惨事の真の原因は,今回この報告書を書いた側,つまり戦後対米従属下で,地方を疲弊させ、沖縄を差別し,格差を拡大し,日本社会を荒廃させてきた旧体制の側にこそある.
 これをおさえて,報道をよく観察してみよう.彼らの本音と焦りをはきりと読むことが出来る.アメリカは現代のローマ帝国であり,凋落しつつある帝国である.もはやこの趨勢は誰もおしとどめることはできない.この帝国と心中するのか,独立するのか,いよいよ問題は明確になってきたように思う.