春先の花

春期講習も今日と明日.いつの間にか四月も五日である.今年の三年生はよく勉強する.集中力もある.私がこの仕事をはじめた1994,1995年頃の高校生のようだ.そのことを他の先生に言うと「脱ゆとりが始まった学年ではありませんか」といわれた.確かに2000年頃指導要領が変わって,それにつれて高校生が変化したことを覚えている.指導要領が変わるとこんなに変わるのかと思ったので,その逆もありうるが,偶然なのかどうなのか,もう少しこれからの高校生の変化を見なければならない.
世上,考えねばならないことは多いのだが,それでも季節はめぐる.春先の花がそれぞれに咲き始めた.左上の写真はハクモクレン.春の初めに咲く.土が肥えていないので花は少なかった.右のはマンリョウの赤い実と黄水仙.これは三月はじめから咲いている.そして一週間ほど前から道の金網沿いに咲いているのが,ヒメツルニチソウ.「姫蔓日日草」と書いてこう読む.近年増えたようだ.紫の花があちこちに咲いている.どんどん花が咲く.
日本列島弧は寒流と暖流が流れ,多湿な温帯モンスーンにある火山列島だ.生物の多様性は豊かである.地中海や中国大陸にくらべて,植物の種の豊富さ,昆虫類の多さはまったく桁違いである.この多様性は大切だ.自然は厳しいし,地震津波もくりかえす.そのうえに生まれたこの多様性は,なんとしても後世に残さなければならない.
そして咲き始めた桜.ソメイヨシノは近代に作られた品種でこれが公園なんかに多い.桜はバラ科.東洋のバラの系譜ではないか.サクラは「咲く−ら」であるという説と,「さ−蔵」であるという説があり,それぞれに意味があるのだが,おそらくはこの二つの語源をもつ言葉が互いにかけられ,混成し熟成して成立したのだろう.花はこうして咲いてゆく.このように春こそ冬籠もりを終えて新しいことのはじまるときである.この季節感を大切にしなければならない.だから私は秋入学に反対なのである.これは言い続ける.
冬籠もりの間に春になったらこんなことをしようと計画を立てる.思ったことの半分も出来ないのだが,それでも計画はたてる.第一には,いま読んでいる『代数幾何学』をしあげてポンスレの定理の線型代数による証明を見直す.サーモン『解析幾何学(円錐曲線)』610頁の脚注で

この条件はケーレー(1853)が楕円関数論をも用いてはじめた与えたるところなり(Philosophical Magazine,VI,99頁).

といってることを,楕円曲線の方から再構成したい.どこかに文献があるのかも知れないが,自分でやってみる.第二は『定義集』をある程度まとまるところまで仕上げる.これも自分の半ば趣味の領域でしかないが,それでもまとめなければならない.第三に,『射影幾何』を読んでくださる人がいるので,その質問を参考に誤植を直し分かりにくい表現を書き直す.そしておいたままになっている結論部分をつくりはじめる.この辺までいければ十分だ.そして第四に,こういうことをしている人間として発言し行動する.ま,頭の働くうちはこのようにしてゆこう.