『検察の闇』

nankai2012-05-30

追伸:大飯原発の再稼働を許さない緊急集会,6月3日(日),午後1時〜,福井市中央公園.まったくの個人で行ってこよう.
昨日の午後出かけようとしていたら予約注文していた森ゆうこ参議院議員の新著『検察の闇』(日本文芸社,2012年5月26日発行)が届いた.一気に読んだ.いわゆる陸山会事件(小沢事件)が,検察や最高裁,そしてそれを操る勢力による冤罪事件であることを,国会議員として体をはって解明してきた森議員の本である.
このような仕事はまさに国会議員の仕事であるが,実際のところ小沢支持といわれる議員のなかでもこのようにやってきたのは森議員ひとりであった.なぜ彼女はこのように取り組んできたのか.彼女の生い立ち,ここに至る経過がこの本には書かれている.それは面白い.ぜひ読んでみてほしいが,森議員はいわば「おばさん感覚」を失わない人だったのだ.
いちばん面白いのは森議員が黒川弘務・法務省官房長を呼び,捜査報告書の真相を糺すところである.そのやり取りが載っている.官房長がのらりくらり逃げるが,しかしついにはごまかしきれない.ここもぜひ読んでほしい.日本の官僚がいかに人間性を失い自分の言葉で喋ることができない存在になっているかがよくわかる.
最後に森議員と小沢氏との対談が載っている.小沢一郎という政治家が議会政治の枠の中で誠実に闘ってきた人であり,そうであるがゆえに,いわゆる旧体制からにらまれ攻撃されて来たこと,小沢氏自身そのことを承知してやっているのだということ.これらがよくわかる.この検察が,一方では東電に指一本触れることをせず,あれだけの企業犯罪に何の捜査もしない.近代日本は,この,官僚やマスコミ,そこと利害をともにする政治家による旧体制をうち破らなければ,その次にはいけないところに来ている.
しかしそれにしてもよくこんな本が出せたものだ.この本の出版自体一つの事件である.ここには,この間いろいろと闘ってきた市民運動の力が後押しをしている.議員には国政調査権があるのに,それを行使したのは森議員だけである.むしろ,市民の体当たりの行動が事態をきりひらいてきた.一市民が斬る八木啓代のひとりごともなどにはまったく頭が下がる.この本が出版できたもう一つの理由は,背後にあるアメリカの凋落である.近代日本の旧体制は,戦後はアメリカの目下の同盟者となることで,ひたすら経済を推し進めた来た.この体制は昭和天皇とその周りの官僚が作りだしたものだ.今日,このアメリカの強欲な資本主義に対する人々の闘いは激しくなる一方であり,南米やユーラシア,そしてアラブ世界とアメリカはその勢力圏を失いつつある.アメリカがかつてのように強大ならこの本の出版企画はつぶされた.
現代は,強欲で腐敗した現代資本主義とその帝国アメリと闘い,人間の原理を一つまた一つ,ここでまたあそこでと,現実化してゆく時代である.この本の出版は,そのような時代の流れのなかで,歴史を一つ動かすことになるだろう.