小沢新党

 民主党で先の消費税増税案に反対票を投じた衆議院議員や同じ見解をもつ参議院議員民主党を離党し,新たな党を立ち上げる.2009年民主党が第一党になった頃,当時の鳩山党首の『私の政治哲学』を読んでの意見を書いたことがある.そこで「民主党が問われるのはすべてこれからである.」と書いたが,結果として,この3年間,民主党は彼らを第一党におしあげた人々の期待をことごとく裏切った.それに対して,小沢氏らは民主党の初心に立ちかえれと,新党を立ち上げようとする.政治家というのは,政策を体現してこそ政治家であり,政治家の果たすべき役割をしっかりつかむなら,この行動は当然であり,理にかなっている.これを「政局だ」という見解が大手新聞等で流布されている.「政局」とは自民党一党支配の時代の派閥間の主導権争いを言う.小沢新党は政局ではない.政策の問題であり,これこそ政治家が政治生命をかけてやるべきことである.
 情けないのは,消費税増税案に賛成できないとの立場を表明し,反対や棄権の行動をとりながら,ひるんでしまってこれまで一緒にやってきたものを裏切る,原口議員をはじめとする人らである.また3人は離党届を一任していながら,出されてから撤回する.これもまたく物笑いであり,このままでは歴史の藻屑として消えてゆくだけである.また鳩山氏とそのグループも,うまく立ち回ろうとしているが,それが許される状況ではない.党員資格停止ということになった.籍だけあって何も出来ない.中途半端な立ち位置では,旧体制側にも見下され使い捨てられる.それを分からねばならない.先の一文で,鳩山氏の政治哲学には実践論が足りないと書いたが,ようするに政治家たるもの何を守らなければならないのかが分かっていないということだ.

  • 目の前に二つの道があるなら,困難に見える方を選んで進め.
  • 目前の利益に惑わされることなく,良心と原則を守って進め.

 これは別に政治家にかぎらない人生態度の基本であるが,つまり人間としての基本であるが,とりわけ政治家を自認するなら,政策の基本を譲らないことにおいて,この二項を守らなければならない.小沢新党が,目先の利益に右往左往することなく,民主党の初心を書き表した当時のマニフェストをもとに,今日の諸課題に対する政策を展開して,本来民主党はこうするべきだったのだ,それをやるということを,正面に掲げて進むなら,大きく飛躍するだろう.いずれにせよ,数は力ではない.どれだけ原則を守るかという質こそ時代を切りひらく力である.それを信じて紫陽花革命の中へ! である.
 大阪に「大阪日々新聞」というのがある.その「大阪発 ザ・論点」は本格的である.7月3日づけのものは「いまこそ、小沢氏に期待する」で,小沢新党を論じた日本の新聞の論説としてこれは最も優れている.大阪以外では手に入らないので紹介したい.これを教えてくれた「反戦な家づくり」さんに感謝.「国民はもっと素直に物事を考えて行動すべきだ。『反消費増税と反原発』の小沢氏を支持するか否かは、官僚支配継続を受け入れるか否かの選択にほかならない。」というのはその通りであり,野田政権を操る官僚のその背後に米国があることを指摘するのも,その通りである.これだけ正面から書くと,必ず税務署などを通して弾圧されるだろうが,がんばってもらいたい.
 歴史の要求は,帝国アメリカが凋落をはじめた今,その支配から独立し,人間としての原理−それを小沢新党は「国民の生活が第一」と表すのだが−を現実化してゆく政治の実現,である.この歴史の要求に応える政治勢力は,どれだけ道が曲がりくねっていようと,現代においてその役割を果たすことができ,存在する意義がある.ひるむことなく,議員個々人の目前の利害にとらわれることなく,その政策を体現できるかどうか,これがすべてである.小沢新党の今後を見守りたい.
 写真は今日出会ったカタツムリと沢ガニ.雨の日に姿を現す.