残暑お見舞い

昨夜の東京官邸前集会で,「原発差止判決」を書いた元裁判官の,井戸謙一弁護士があいさつされた.そのことがJanJanBlogで紹介されている.こういう井戸弁護士の姿にはほんとうに励まされる.井戸弁護士は,先日も人民新聞で「志賀原発2号機 運転差し止め判決の元裁判官・井戸謙一さんが語る」と大阪での集会の発言が紹介されていた.井戸弁護士が言われるように,日本の裁判所は三権分立の立前の裏で,戦後一貫して良心的な裁判官に対し見せしめ的差別人事をおこない,司法を政治に従属させてきた.典型は原発裁判であり,この間の小沢氏に対する検察審査会制度をつかった攻撃であった.取り仕切っていたのは最高裁事務局.ここを通してアメリカの意図を司法に反映させてきた.その一方で,核惨事を引きおこした東京電力の企業犯罪については,捜査すらおこなわれず今日に至っている.裁判所自体が旧体制・原子力村の一部,その利益のために動いてきたのだ.近代政治の立前の三権分立が,戦後日本においてはまったくのウソであった.
井戸さんの姿をネットで見て励まされてこれを書きはじめたのだが,私の方は昨日までの11日間,毎日5〜6時間授業をしてきた.結構面白かったがまた疲れた.高校生に数学を教えるのは,やはり止められない.そこでのテストの採点もようやく終わり月曜日に事務所に届けるところまで来た.これで私の夏の仕事は終わり.しかしまだ9月10日締め切りの問題作成,原稿整理の仕事がある.これがたいへんだし責任もある.この作業を再開した.ということで合間にこれを書いている.さすがにこの間は『Poncelet's Theorem』は数頁しか進まなかった.定義集も考える準備をしはじめただけだった.こうしてようやくに夏期講習も終わり,夏の間拡散した感性をもう一度集中して,仕事にかからなければならない.
この間,日本,中国,韓国の間のいわゆる領土問題が表面化してきた.しかし外交は内政の延長である.韓国大統領があのようの行動に出たのはこの4年間の彼の治世が韓国内でまったく支持されていないことがある.内政で人々の支持を得られないとき,対外的に強硬に出るというのは使い古された為政者の手段である.これに野田も乗った.原発問題,消費税問題やオスプレイ配備問題などを見えなくするために,領土問題をむしかえしそれを政府系御用新聞である日本の大手新聞があおり,騒ぎになった.しかし歴史的経過を見れば,現代に残る日本がかかわる東アジアの領土問題は,アメリカが日本とサンフランシスコ講和条約を結ぶときに,あえて曖昧においたことに起因している.そしてアメリカは再びそれを活用し,今回の領土問題の騒ぎを引きおこした.植草さんが「領土紛争はアメリカが仕掛けた」で書いておられるように,この問題の背景にアメリカがある.いまやアメリカはこの地上世界で無用の長物である.アメリカの為政者は自らの存在価値を演出するために,紛争を引きおこし調停者としての役割を演じようとする.日本の外務官僚もこれにのる.それに操られて野田が喋る.ということである.
世界の趨勢は帝国アメリカの凋落であり,世界各地でそれぞれにアメリカ後の体制を模索する時代である.強欲な資本主義,帝国アメリカの世界から,人間原理の世への長期にわたる転換過程,これが現代である.昨今の領土問題の動きもこの過程の一コマに過ぎない.再び外交は内政の延長である.内政,それは原発廃止,廃炉過程への政治体制を生みだすこと,これであり,福島の子供たちの疎開を実現し,沖縄の基地を撤去し,消費税増税廃止,地方の活性化,農業振興を,つまり経済よりも生活を第一とする政治の実現である.この過程を飛び越えることはできない.今度の金曜日は大阪関電前に行くつもり.秋の気配を朝夕に感じるとは言え,残暑厳しきこの頃である.