暗闇の思想(続)

この数日,仕事と私事で忙しかった.昨日遅く帰ってくると,小出裕章さんの「生き方そのものが問われている」というインタビュー記事の載った人民新聞が来ていた.一読,たいへんに心を動かされた.いまこれを取りあげた編集長の山田さんにもお礼を言いたい.この記事は上記リンクからネットでも読める.

  • 福島第一原発1〜3号機:その後、熔けた核燃料がどうなっているのか? 実は誰にもわからないのです。
  • 福島第一原発4号機:1331体の使用済み燃料を完璧に安全に吊り出す作業となるので、どれほどの被曝労働と時間がかかるか、私には想像もできません。
  • 関電:「経営難」というなら、この高い発電方法を選んできたという経営上の責任が、関電首脳陣にはあるはずです。
  • 新基準:原子炉が壊れたのは、地震が原因なのか? 津波が原因なのか? また別の要因なのか? もわかっていないのに、どうやって新しい基準が作れるのでしょうか?

その通りだと思う.指摘されている福島原発の現実は,まったく絶望的だ.私はほとんどテレビは見ないのだが,それでもときどき目に入る.すると北朝鮮の核実験の報道である.さもたいへんなことのように報道する.私ももとより核実験には反対だ.しかし少なくとも核実験は制御された中でのことだ.人類にとってそれよりもはるかにたいへんな問題が,いまこの日本の福島にある.制御不能,いやその前に現状把握も出来ない破壊された原子炉が,そのままにある.広島原爆1万発分の放射能量をもつ物質が,不安定なプールに沈んでいる.その現実を覆い隠したまま他国の核実験を論じるのは欺瞞である.
そして恫喝資本主義,原子力村はショック・ドクトリンそのままに「原発を動かさなければ電気代を上げるぞ」,「原発ばかり言っていると不景気のままだぞ」などなどと脅しをかけ,再稼働に向けてひた走っている.これが今の日本である.このような動きを見すえながら,編集部の「最新刊で『暗闇の思想』を提唱されていますが…。」との問いかけにこたえて小出さんは言われる.

東洋の端にある小さな日本は、欧米を見習う近代化によって、エネルギーを大量に使えるようになり、人殺し兵器も劇的に発展させてきました。西洋型の科学技術にすがって、大国を目指したのですが、それ自体が間違いだったのだと思います。
工業化のために農業を潰し、海を汚染し、沿岸漁業を壊滅させましたが、その当時に松下竜一さんは、声を上げました。海の埋め立てに反対し、発電所建設にも反対しました。それを彼は死ぬまで貫き、晩年は、さらに関心を広げていきました。 工業にどっぷりと依存し、自然を壊しながら「カネ」を追い求めてきた日本の社会の作り方を見直す、という意味で、松下さんは先験的な仕事をなさった素敵な人でした。
「どういう社会を作るべきなのか?」が最も重要なテーマです。原発事故は、代替エネルギーをどうするか? 経済をどう成長させるか? というようなレベルの話ではありません。私たちの生き方そのものが問われていることに気づいてほしいと思います。

そういうことだ.経済を第一の価値とする大量消費の世から,人間としての営みを互いに認めあい支えあう世へ.その中味は,これからのことであるが,大きな理念,転換期の方向性をしっかりもって,日々なし得ることを,やはり一つ一つとやってゆきたい.