橋下とは誰か

 いつもの金曜行動は隔週.昨日はそれで府立労働センターであった<もう たくさんだ! さらば「橋下・維新現象」>に行ってきた.「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」のここや,「アジア・太平洋人権情報センター」のここに集会案内がある. 主催は「橋下現象研究会」(代表:杉村昌昭さん)で,大阪市大の島和博さんが司会,大阪府立大の酒井隆史さん,代表の龍谷大名誉教授でフランス現代思想研究の杉村昌昭さん,「大阪の男女共同参画をすすめる会」の中野冬美さんらが報告.その後,大阪でさまざまに闘っている人らの発言があった.
 労働センター6階の大会議室が満員で立っている人も結構多い.ほとんどがわれわれの世代前後.酒井さんが指摘されていたように,世上「橋下を支持しているのは,橋下の新自由主義でいちばん被害を受ける層だ」と言われるが,これは事実ではない.西成区の橋下支持率はいちばん低い.橋下を支持しているのはむしろ1990年〜2010年に一定の経済水準を実現した層である.それは恐らく安部の支持層と重なる.つまりは,資本主義の危機の中で既得権を守ろうとする層,守るためには何でもありの層が,彼の支持土台である.昨日の集会の報告は,雑誌「インパクション」に載るとのこと.でれば読みかえすつもりだ.
 橋下現象研究会は関西の研究者,教員,弁護士などで構成.昨年,「『橋下現象』徹底検証−さらば,虚構のトリック・スター」(インパクト出版会)という本を出した.昨日,この本も買ってきた.読み応えのある本だ.しばらく時間をかけて読む必要がありそうだ.手にとって,これはどこかで見たと思った.そうだ,アラン・バディウの「サルコジとは誰か」だ.この本はサルコジが大統領になって間もなく書かれた本だ.このような本も一定の力をもったのだろう.サルコジは再選されなかった.杉村さんが中心に編纂した「『橋下現象』徹底検証」はまさに「橋下とは誰か」なのだ.このような本,このような集会は,橋下政治の本質を解明し,そうすることで彼の政治基盤を切り崩す上で一定の力がある.橋下政治と闘っているさまざまの人らの連携が模索されてゆくだろう.
 まえにも言っているが,維新の会は幕末の新撰組新撰組は幕府=旧体制の別働隊.幕府が大きく揺らいだときに,それを補完する役割を演じた.戦後政治体制が揺らいだとき,維新の会も生まれてきた.そこは同じなのだが,現代資本主義の中における新撰組は,より複雑でその本質を暴くのに,力がいる.また,日本の戦後政治のあり方は,フランスよりもさらに複雑.
 旧体制を,明治10年頃成立した天皇制を取り込んだ官僚支配の近代日本政治体制,としよう.戦前は脱亜入欧でアジア侵略を行い,戦後は一転,対米従属で支配を続けてきた.そして戦後政治の総決算を掲げた中曽根行革,小泉改革と弱肉強食の新自由主義を行ってきた.しかし,新自由主義は実は世の伝統的な仕組みを破壊し,それまでの統治方式を食い崩す.その矛盾が旧体制の本当の矛盾だ.
 「橋下」とはこの旧体制の危機の時代に,世のあり方を再編し,より直接に支配と収奪をすすめるために,既存のマスコミも使い,まさに「虚構のトリック」で立ち回るスター政治家である.これまでの支配のあり方が揺らぐなかで,旧体制もまた次の支配のあり方を模索している.ショックドクトリンでこの機にそれを進めようと,アベノミクスである.それを補完する維新の会.しかし彼らにもはや次はない.次を許さない.
 今はまだこれ以上に内容に踏み込んだことは書けない.昨日聞いたことや買った本を読んでみて,「橋下とは誰か」をこちらでも考えてゆくつもりだ.