金曜行動の日に(続)

金曜日は,集会に出て声をあげながらいろいろと考えてしまう.今日は大阪の関電前集会に加わってきた.主催者が,後での報告では思いの他の渋滞で遅れたとのことで,6時半になってもはじまらない.すると一人の女性が私が音頭をとりますと,関電に向かって声をあげはじめた.それにあわせていつものように声があがる.とっさに行動する人に思わず頭を下げる.間もなく主催者のスピーカも来て8時ごろまで続いていた.
それにしても,間もなく3回忌が来るというのに,地震津波と核惨事で亡くなった人の魂は安まらない.田中龍作ジャーナルの原発事故・福島告訴団 「検察は起訴しろ、東電は自首しろ」は二週間前の記事であるが,その通りなのだ.未必の故意の殺人,これが東電の犯罪である.しかし一向に社長も責任者も逮捕されない.捜査すら表向きのものでしかない.核惨事で誰が責任をとったか.誰も責任をとっていない.企業も国家も責任をとらない.それは許されないと私も,告訴団に加わっている.意思表示以上のことは何も出来てはいないのだが,
先日チャベスベネズエラ大統領が亡くなった.享年58.彼は,2006年9月20日,国連総会で行われた一般演説において,壇上に立つとき,以前この場所で演説を行ったブッシュ大統領を暗に仄めかし「この場所にかつて悪魔がいた.いまだに悪臭が漂っている」と言い,厳かに十字を切った.ブッシュの悪臭を公言する数少ない元首であった.彼は,あきらめて奴隷状態にあった人々に,まず奴隷であることを教え,あきらめずにともに闘うことを呼びかけ,そして彼らに新しい生き方を提示した.
毎日新聞が伝える.きょう国葬 移送の沿道に数万人.

 チャベス氏のポスターを手に数時間前から沿道でひつぎを待っているという地域活動家の女性、ダニー・メンドサさん(37)は「私はただの主婦だったが、彼が地域に貢献する意義を教えてくれた」と語り、貧困層を支援したチャベス氏の功績を涙ながらにたたえた。
 ひつぎが近づくと、「チャベスとともに」との大合唱が沸き起こった。その後も人垣は増え続け、一歩も進めない状態に。昨年退職したという男性、ホルヒ・マルケスさん(63)は「この熱狂こそがチャベス氏が我々に与えてくれたものだ。南米の誇りはそれまでなかった」と語った。

スペインの植民地支配に抵抗する長い歴史をふまえて,チャベスはいた.このように語る人がすべてだ.新自由主義資本主義に対抗する世のあり方を模索しての生涯であった.今少し彼のために時間があってもよいのでは,とも思うが,チャベスは与えられた時間の中でなし得るすべてのことをした.
これから,チャベスの後に,アメリカや西洋世界はベネズエラを再び自分たちの枠組みの中に引き戻すためにいろいろな干渉をするだろう.そしてまたそれによって一時の逆流もあるだろう.しかし,チャベスのおかげで人間の誇りを持ったという人の存在とその記憶は,絶対に消えない.彼は確かに新しい時代をきり拓いた.いかに紆余曲折を経ても,ベネズエラは必ず到達すべきところに到達する.
日本は,人間原理の実現という指標において,ベネズエラからはるかに遅れている.私事ではこの10日ほど,仕事に明け暮れた.水曜日に自宅で,仕事仲間と夜更けまで食べて飲んでの時間を過ごした以外は.といっても書斎仕事の原稿書きと,入試問題の解答作成.今年の入試問題に関しての意見も寄せられた.阪大の問題ではいろいろ考えるべきことがあった.そして今日あたりから合格発表.今日早くも一人合格メールをもらった.こうして新しい大学生も生まれてゆく.しかし制度としての日本の大学は人間を育てない.解答を作りながら自分で書いた『解析基礎』を読みなおす.その中のまえがきの中で書いたが,日本の教育機関は人間を「人的資源」と見ている.

 1970年代初頭,日本の教育は大きな転換をした.このころ中央教育審議会は「人的資源の開発」ということを言いはじめる.「人的資源」とは生産活動に必要な技術をもった労働力ということそのものである.人を人として育てる教育から,人を資源として使えるようにする教育への転換である.この能力を開発するのが教育だというわけである.教育を生産活動の一部とする考え方が表面化する.人的資源という観点からすれば,現実を批判するよりも,ひたすら従順に働く労働者のほうが都合がよいことになる.現実批判力より感性的理解による現状肯定の教育.この方向性はいまも変わっていない.

東京の石原,大阪の橋下がすすめてきた教育の方向は,人間を金儲けの資源とみる見方を推し進めるものであった.それに対して「俺たちは資源ではない,人間だ」と声をあげる学生,人間としての誇りを育てる教育を,という教員の闘いは続く.3月から4月の教育現場でのいろんな出来事を,卒業式や入学式の様子もふくめて,身近なところから遠くのことまで,見守っている.この10日も昼頃から中之島近辺に行くつもりだ.
追伸:寝る前に少しテレビを見たら,中国の黄砂の問題.PM2.5の報道.しかし福島核汚染の方がはるかに深刻で,高濃度の核汚染を環境系に流し続けているのが,東電と日本政府だ.中国の汚染のひどさはその通りであるが,3.11を前に,核汚染のひどさを隠し,福島の現在を見えないようにする意図がありありである.なんという日本なのだろうか.冷静に考えればこんな酷い国は他にはない.