金曜行動の日に

今日は定例の関電前集会の日である.6時半には100人弱ではじまり1時間ほどでおよそ150人というところか.日が短くなり空は暗い.
小泉純一郎元首相が新聞で「原発ゼロ」を主張した.小泉元首相の「原発ゼロ」は,今日の世界のあり方を考えるうえで,逆にさまざまのヒントを与える.
小泉発言に対して,脱原発運動をしてきた人の中からも,これを評価する声が上がっているようである.こういうときは,その人間が,どのような政治的立場の人であるのかから考えなければならない.
小泉純一郎とは何者か.その政治的立場はどこにあるのか.今年,日本郵政の保険部門が,アメリカ大手保険会社の下請けになり,その商品を,郵便局で取り扱うようになった.これは歴史ある日本の郵政事業をアメリカの保険資本に売り渡すことであり,その具体化の第一歩である.そしてそのはじまりが,小泉純一郎の「郵政改革」であった.
小泉改革は,それまで資本の好き勝手な行動に対する歯止めとしておかれていた規制を,「規制緩和」の名の下に廃止,大企業が労働力を徹底して安く,いつでも使い捨てられる形で雇用することを可能にした.その結果,日本社会の格差は,それ以前に比べて質的に異なる段階まで深まり,今日の世の荒廃をもたらした.彼こそ,日本の国民のさまざまの資産を,国際金融資本に売り渡した,その意味で真の売国奴であった.
では,その手法は何であった.それが彼の靖国参拝である.彼はこれによって,彼の売国政策に本来ならもっとも反対するべき右派勢力を,だまし,骨抜きにし,規制緩和によっていちばんやられる層を逆に自分に投票させることに成功した.彼は靖国神社に参拝しながら,その一方でブッシュアメリカ大統領に媚び,あまりの媚びへつらいにブッシュに「コイズミ軍曹」(「コイズミ大尉」ではない)と揶揄されるような人間であった.
今回の「原発ゼロ」の主張は,この靖国参拝にかわる彼の新たな手法である.これによって,脱原発運動を分断する.そして小泉改革の仕上げをする.郵政の金融資産の国際金融資本への売却,TPPによる徹底した規制撤廃.医療のアメリカ化,等々である.国際金融資本にとって安倍内閣民族主義の危うさをもっている.石原などの対米自立的な右派と結びつく可能性が内容としてある.それに対して小泉純一郎は純粋に国際金融資本の意図を体現している.はるかに使い勝手がよい.安倍があまりに愚かなので,あれではだめだという国際金融資本の意を受けての「原発ゼロ」発言ではないか.
さらに,「原発ゼロ」の主張にはもう一つの,国際金融資本の意図がある.彼らにとって原発は,大変危険なものであるが,しかしアジアやアフリカ,南アメリカなどの地域に売れば大もうけができる.だから,欧州やアメリカの原発は順次廃炉にしながら,その一方で,原発輸出は拡大する.そして事故が起こればその地域を,そこに住む人ごと封鎖する.
国際金融資本,それはまた国際原子力村でもあるのだが,彼らにとって日本はどのような位置づけになるのか.それは核のゴミの廃棄場である.最終処理は日本で引き受ける.それとセットで原発を輸出する.これが国際原子力村の意図であり,そのためには,日本の原子力発電はすべて廃止にしてもよい.廃炉ビジネスもまた大きな商機である.そして,原発にかえて核廃棄物処理のためのさまざまの施設を日本に作り,それと一体に原発輸出を進める.小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」のもう一つの意味はそこにある.
とすれば,われわれの側もまた,一国的な脱原発運動,つまり日本の原発がすべて廃炉になればいい,という脱原発運動をこえて,国際的な反原発運動ともっと合流してゆくことが必要だ.そうしなければ,小泉流の手法で分断されてしまうだろう.この地球上から,いや地球上でさえないのかも知れない,宇宙空間の原子炉を含めて,すべての原発廃炉にする.それでも核廃棄物の最終処理には途方もない時間がかかる.日本は,これだけの核汚染を今後数世代,いやそれ以上にわたってまき散らすのだ.せめて,現実に核惨事の渦中にある日本の運動は,もっと切実に,反原発を世界に訴えなければならない.
それにまた,核惨事の現実の過酷さはこのような国際原子力村の意図をも許さない.時事通信も27日,「トリチウム1100ベクレル検出=3号機の山側井戸−福島第1」と報じている.東電はその原因について「分からない」といっている.わからないわけがない.しかしそれを言えば,オリンピックが吹っ飛ぶ.だから安倍内閣と東電は口裏を合わせて「わからない」で通そうとしている.「わからない」で何が「コントロールできている」だ.なぜそんな値が出るのか.「福島原発の地下水から史上最高値!トリチウムを17万ベクレル検出!溶けた核燃料の存在を無視する東電!」にも書かれているように,このようなトリチウムの高濃度検出は,溶けた核燃料が地下水と反応している以外にはありえない.事実そうなのだ.おそらく破局的なことが地下のどこかで起こっている.その汚染水が無制限に海に出,また汚染された地下水が東北や関東に循環している.
集会のあといつもの彼と食事.彼は小泉はアメリカの没落を見越して生き残りを画しているのではないかという.また,彼は東京五輪はありえない,開催は不可能という見解で,これも意見が一致した.その他いろいろと議論をして別れた.